伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は2026年10月1日、米国のExaforce, Inc.と組み、セキュリティの監視から調査、対応案の提示までをAIエージェントが担う「AI SOC」を国内で展開すると発表しました。サービス名は「CTC-MSS AI SOCサービス powered by Exaforce」です。

つまり、人が張りついて行っていた「怪しい通知を選り分け、原因を調べ、どう対応するかを考える」作業の大部分を、AIが先に済ませて人に渡すサービスが、日本でも使えるようになります。

本記事は、CTCの発表と各社の公開情報にもとづいて整理しています(確認日は2026年10月3日)。

結論:何が起きたか、誰に関係するか

迷ったらこれ:自社に監視の専任担当がいない企業や、通知の対応が追いつかない企業は、AI SOCを選択肢の1つとして検討の対象に入れてください。最初に必要なのは契約ではなく、今の監視体制の仕分けです。

結論と発表の主要数値をまとめた図
発表の要点は日程と数値だが、数値の主体はExaforceとCTCだと読み取れる。

得られるものの目安は、発表に載っています。Exaforceは導入実績として、従来の運用と比べて誤検知を90%削減し、アラートの平均調査時間を95%短縮したとしています。これはExaforceの数値であり、CTCのこのサービスで測った結果ではありません(詳しくは後述)。

項目発表の内容
誰がCTCがExaforce, Inc.の「Exaforce Agentic SOC Platform」の取り扱いを開始
何を監視・脅威の検知・調査をAIエージェントが担うサービス
いつから2026年10月1日から国内展開
誰向けSOCの専任人材の確保や、アラートの分析・対応に課題を抱える企業が中心
販売目標3年間で15億円(CTCの目標であり、効果の数値ではありません)

関係するのは、監視を外部に委託している企業、社内で担当者が兼務している企業、そして「AIが専門職の仕事をどこまで肩代わりするのか」を知りたいビジネスパーソンです。

今日の最初の一歩:自社の監視体制を1行で書き出してください。「誰が・いつ・何を見ているか」です。書けたら、その作業が後述の「検知」「調査」「対応案の提示」のどれに当たるかで分けます。AI SOCが自社に必要かを考える材料は、これで揃います。

そもそもSOCとは?AI SOCとは?

SOC(Security Operation Center) は、ネットワークや端末の動きを見張り、不審な兆候に対応する組織や拠点のことです。社内に置く場合もあれば、外部の事業者に任せる場合もあります。後者は MSS(Managed Security Service) と呼ばれ、CTCのリリースもこの2つを並べて説明しています。

従来のSOCからAI SOCへの流れの図
従来は人が担っていた選別や一次調査を、AI SOCではAIが受け持つ。

従来のSOCは、ルールにもとづく検知と、人によるトリアージ(通知を重要度順に仕分ける作業)が前提でした。AI SOCは、この選別や一次調査をAIが受け持つ運用を指します。

CTCの発表では、次のように説明されています。

  • MSSやSOCで行われるセキュリティ監視、脅威の検知、調査などをAIエージェントが担う
  • 複数の機器や製品のログや設定を関連付け、単一のアラートでは判断しにくい脅威も検知する
  • 優先度の判定、発生原因や影響範囲の調査、対応案の提示までを自動化する

Exaforce, Inc.はカリフォルニア州サンノゼに本社を置き、Ankur SinglaがCEO兼共同創業者を務める会社です(CTCリリースの記載)。同社は自社を「AI駆動のAgentic SOCおよびMDRプラットフォーム」と説明しています。

なぜ今、AI SOCが出てくるのか

背景は、通知の量と担い手の不足です。Exaforceの解説ページは、Google Cloudの調査として「61%のチームがデータフィードの多さを感じ、60%がアナリスト不足を課題に挙げた」と紹介しています。これは調査元の数字であり、CTCやExaforceの製品の効果ではありません。

通知の増加と人手不足を示す調査数値の図
背景は通知の量と人手不足で、数字は調査元のものと読み取れる。

CTCが対象に挙げる「専任人材の確保や、アラートの分析・対応に課題を抱える企業」は、この状況そのものです。通知は増えるのに、見る人が足りない。そこをAIエージェントで埋めるのがAI SOCの狙いです。

AI SOCは何を自動化するのか:Before → After

発表の記述をもとに、従来の運用と並べるとこうなります。

従来運用とAI SOCを4工程で比べた図
検知から対応案の提示まで、4つの工程で人の作業がAIに移る。
工程従来(人が中心)AI SOC(発表の記述)
検知機器ごとの通知を担当者が見る複数の機器・製品のログや設定を関連付け、単一のアラートでは分かりにくい脅威も検知
選別(トリアージ)担当者が重要度を判断優先度の判定をAIエージェントが実施
調査ログを開いて原因や影響範囲をたどる発生原因や影響範囲の調査を自動化
対応担当者が対応方法を考える対応案の提示までを自動化

数値は先ほどの1組です。発表は「Exaforceによると、導入実績において、従来の運用と比較して誤検知を90%削減し、アラートの平均調査時間を95%短縮している」と記しています。

読むときの注意点は3つです。

  1. 数値の主体はExaforceで、CTCが提供するこのサービスで測った結果ではありません。
  2. 発表ではこの数値に注記が付いています。どんな条件の導入実績かは、導入を検討する段階で確認したい点です。
  3. 「90%削減」「95%短縮」は、他社が示す数値とは測り方が違います。横並びで優劣は付けられません。

自動化の段階と、人が担う役割

Exaforceの解説ページは、SOCの進化を4段階で整理しています。

SOCの4段階の進化を示す流れ図
段階が進むほどAIの担当が増え、人は判断と調整に回る。
  1. 手動SOC:人がすべて見る
  2. 自動化SOC:スクリプトやSOAR(定型の対応手順をあらかじめ登録して自動で動かす仕組み)のプレイブックで自動化する
  3. AI SOC:機械学習や自然言語AIがアナリストを支援する
  4. 自律型SOC:AIエージェントが検知から対応の大部分を実行する

CTCのリリースは、調査から対応案の提示までを「AIエージェントが担う」運用だと説明しています。ただし発表は「人が不要になる」とは書いていません。

人の役割はこう書かれています。従来は担当者が行っていた定型的な確認や調査をAIエージェントが担うことで、お客様の担当者は、対応の判断や社内調整など、人による対応が必要な業務に注力できる、というものです。

つまり変わるのは「人がやること」の中身です。通知を1件ずつ開く作業から、AIが出した対応案を見て、止めるか、誰に連絡するかを決める作業へ移ります。

また、Exaforceの解説ページは、AI SOCがうまく働く前提として、ログを大規模に取り込むことと、自社のルールや事情(ビジネスコンテキスト)を反映させることを挙げています。AIが判断するには、材料と自社の前提が要る、という整理です。

提供形態と対象:企業向けのマネージドサービス

CTCのサービスは、個人が申し込んで自分で動かすツールではありません。リリースから分かる範囲は次のとおりです。

提供形態と対象をまとめた図
対象は企業で、価格や契約条件は発表からは分からない。
  • 監視を任せるマネージド型(MSS)のサービスとして提供される
  • Exaforceが管理するAWS上のクラウド共通基盤を使い、顧客ごとに分離した利用環境を提供する
  • 対象はSOCの専任人材の確保やアラートの分析・対応に課題を抱える企業が中心

価格、契約条件、問い合わせ先は、リリースに記載がありません。個人や小規模なチームが無料で試せるプランも、発表には出てきません。

導入前に考えておきたい壁として、セキュリティ分野の解説でよく挙がるのは、費用、AIの誤判断(ハルシネーション)、判断根拠の説明のしやすさ、AIを調整できる人材の不足です。これはCTCの発表の内容ではなく一般的な論点ですが、問い合わせるときの質問リストとして使えます。

国内の他の動きとの位置づけ

同じ領域では、他社も動いています。公式ページの記載の範囲で並べます。

国内3社の開始時期と価格を並べた比較図
大手通信会社、商社系SIer、地域の事業者へ同時に広がっている。
CTC×ExaforceNTTドコモビジネスセキュアヴェイル(STNet販売)
開始2026年10月1日2026年5月20日に「AI SOC」の提供を開始2026年4月17日に四国エリアで販売開始
特徴検知・優先度判定・調査・対応案の提示までをAIエージェントが担当AIによるログ分析と自動対処の組み合わせ(詳細は公式発表を参照)「SOCの無人化と低価格化」をうたう
価格記載なし公式発表を参照FortiGate向け月額9,800円〜(税抜・年一括払い、最低契約1年以上)

各社で対象も機器も測り方も違うため、数値や価格を並べて良し悪しを決める表ではありません。見てほしいのは、この領域が大手の通信会社、商社系のSIer、地域の事業者へと同時に広がっている点です。

中小企業・セキュリティ担当でない人はどう読み替えるか

CTCのサービスをそのまま使えない企業でも、読み取れることがあります。

AIが先に処理し人が判断する3つの当てはめ例
手前の定型作業をAIに寄せ、最終判断は人が持つ構図は他の業務にも使える。

これまで「専門知識がある人でないと回らない」と考えられてきた監視業務で、AIが「選別 → 調査 → 対応案の提示」という流れを担い始めた、という設計の考え方です。人が最終判断を持ち、手前の定型作業をAIに寄せる構図は、ほかの業務にも当てはまります。

  • 問い合わせ対応:一次回答の案をAIが作り、担当者が確認して送る
  • 経理チェック:請求書の突き合わせをAIが先に行い、疑わしいものだけ人が見る
  • ログ・通知の確認:大量の通知をAIが分類し、人は重要なものだけ判断する

上の3つは、発表に出てくる事例ではなく、考え方を自社に当てはめた例です。

実際のAIエージェント導入では、営業業務から顧客対応、複数システムの統合運用まで、判断が必要な部分を人が見直し、定型的な処理をAIが先に進める構図で成果を上げています。セキュリティ監視の場合も同じく、AIが通知の選別と一次調査を済ませることで、人は「どう対応するか」の判断に集中できます。こうした業務自動化の実例を見ると、営業対応の60%以上をAIエージェントが担当し、最終的な営業件数が増えた事例が報告されており、AI SOCと同じ考え方が機能している実績があります。

今日からできること

最初の一歩は、自社の監視体制を仕分けることです。

監視体制を仕分ける4ステップの図
この4ステップで、問い合わせ時に何を任せたいかを伝えられる。
  1. 誰が・どの時間帯に・何を見ているかを1行で書く(例:「総務の兼任者が、平日日中にメール通知を見ている」)
  2. その作業を「検知」「調査」「対応案の提示」に分ける
  3. 人が判断すべき部分(対応の決定、社内調整)に印を付ける
  4. 印の付かなかった定型作業が多いなら、AI SOCのような仕組みに任せる余地がある

導入を進める場合の流れは、Exaforceの解説ページでは、現状評価、AIによる選別の試験導入、調査・対応への拡張、の順で示されています。いきなり全面移行せず、通知の選別から始める考え方です。

この仕分けができていれば、提供事業者に問い合わせるときも「何を任せたいか」を具体的に伝えられます。提供時期や対象の詳細はCTCの発表(PR TIMES)で確認でき、自社が対象に当たりそうなら、価格と契約条件を問い合わせる際に仕分けメモを手元に置いておくと話が早く進みます。