2026年10月15日、Metaが「Muse Spark Open」の重みを公開しました。画像・動画・音声も読み込める(マルチモーダル)大型モデルです。重みがダウンロードできるので、自分の環境に置いて動かせます。この形を「オープンウェイト」と呼びます。処理のたびに256人の専門家(エキスパート)のうち8人だけを動かす「MoE」という仕組みも使っています。

本記事は公式のHugging Faceブログ、モデルカード、ライセンス本文に書かれている内容に基づきます。実機での計測は行っていません。公式情報と報道は本文中で区別して書きます。

Muse Spark Openとは?結論と今日の最初の一歩

つまり何が起きたのか。 Metaが、画像・動画・音声まで入力できる大型モデルの重みを公開しました。商用利用も許諾されています。Meta自身は「現時点で最も高性能な米国発のオープンウェイトモデル」と位置づけています(Metaの評価です)。

迷ったらこれ:ダウンロード前に環境で動くかを判断する
最初にやるのは、重みを落とすことではなく必要メモリとライセンスを読むこと。

迷ったらこれ。 結論は次のとおりです。

  • 手元のPCや16GBクラスのVPSで動かしたい人: Muse Spark Openは向きません。公式が示す最小の動作例でもメモリは304GBで、16GBのVPSの約19倍です。手元に512GB級のメモリがなければ、API経由で試すのが現実的です(後述)。
  • 512GBメモリのMac(M3 Ultra)かGPUサーバーを使える人: 試せます。公式は2-bit量子化(重みを小さく圧縮する方法)で約18トークン/秒の動作を示しています。
  • 最初の5分でやること: Hugging Faceのモデルページを開き、ライセンスと必要メモリを読みます。ダウンロードを始める前に、自分の環境で動くかを判断してください。

用語を一言ずつ補足します。

用語意味
オープンウェイト学習済みの「重み」(モデル本体のデータ)が公開されていて、自分の環境に置いて動かせる
MoE処理のたびに全体の一部の「専門家」だけを動かす構造。計算は軽くなるが、重みは全部載せる必要がある
マルチモーダル文章だけでなく画像・動画・音声も入力できる

Muse Spark Openでできること(公式の仕様から)

公式ブログとモデルカードに書かれている主な仕様です。

総816Bのうち1トークンで動くのは約42Bという関係
計算に使うのは一部でも、置く場所は816B全体ぶん必要になる。
項目内容
総パラメータ数約816B(8,160億)
1トークンで動く分約42B
MoE構成1層に256エキスパート、1トークンで8つを選択
入力テキスト・画像・動画・音声
出力テキスト
コンテキスト長最大100万トークン
対応言語100以上
配布形式BF16 と NVFP4 の2種類

補足として、言語モデルは62層、隠れ次元は8192です。画像・動画用のエンコーダーは1.8B、音声は80msごとに1トークン(約12.5トークン/秒)で処理します。

公式ベンチマーク(モデルカード掲載)は次のとおりです。

ベンチマークスコア
JobBench61.8
MCP-Atlas89.2
DeepSWE 1.160
Terminal-Bench 2.176.4
BabyVision80.2
VideoMMEv261.5
StrongREJECT v20.5(低いほど良い)

ツール操作(MCP-Atlas、Terminal-Bench)とコーディング(DeepSWE)の両方が載っています。他社モデルとの比較は、公式の表で裏づけられる形では示せないため、優劣表は載せません。

何が進化したか:前世代のオープンモデルとの違い

Metaの前世代のオープンモデルは、2026年8月10日に公開された「Muse Glimmer」です。違いは次のとおりです。

Muse GlimmerとMuse Spark Openの構造・入力・動かす場所の比較
小型の密モデルから大型MoEへ変わり、置き場所への要求が桁違いに増えた。
Muse GlimmerMuse Spark Open
構造30Bの密(dense)モデル816B-A42BのMoE
入力テキストテキスト・画像・動画・音声
動かす場所の目安単一GPUまたはMac向け(報道)512GB級Macか複数GPUサーバー

公式ブログによると、Spark OpenはGlimmerの「1層に1つの密FFN(全結合の計算部分)」をMoEブロックに置き換えた設計です。

Before → After: 小型の密モデルから、総量816Bの大型MoEになりました。1トークンあたりの計算は約42B分で済みます。一方で、重みを置く場所への要求は桁違いに増えました。

API・アプリ向けの「Muse Spark 1.x」シリーズとの関係は、公式ブログとモデルカードのどちらにも記載がありません。本記事では関係を推測せず、シリーズの各版の公開日も書きません。以前は「オープンウェイト版は未公開」とする記事がありましたが、2026年10月15日の公開により、その情報は古くなっています。

ライセンスと商用利用の条件

ライセンス名は「Muse Model License」です。公式のLICENSE.mdとモデルカードの内容を平易に整理します。

許諾されていることと守る条件の2列比較
商用利用は許諾。表示・同梱・MaaSの収益条件の3点だけ確認すればよい。

許諾されていること

  • 商用利用
  • 改変(ファインチューニングを含む)・派生物の作成
  • 蒸留
  • 再配布・販売

守る条件

  • 製品やサービスのUIに「Built with Muse Spark Open」を目立つ形で表示する
  • 再配布時はライセンスと利用ポリシーを同梱する
  • 「Model as a Service」(モデルそのものをサービスとして他社に提供する事業)の総収益が連続12か月で2,000万米ドルを超える場合は、Metaへの通知と別途書面契約が必要。社内利用など、MaaS以外の商用利用は対象外

禁止用途(モデルカード) 違法行為、児童搾取、嫌がらせ・差別、無資格の専門業務、マルウェア作成、安全対策の回避、軍事・違法兵器、適切な保護のない重要インフラ運用、欺瞞目的などです。

別の話として: 無料の外部サービスには、入力が将来のモデルの学習に使われる条件を設けているものがあります。これはそのサービス側の条件で、Muse Spark Openのライセンスとは別物です。条件は変わりうるので、事業で使う前にライセンス本文を読み、不明点は法務の担当者に相談してください。

自分の環境で動かせる?必要メモリと判定表

公式が示すメモリの数値は次のとおりです。この間を補う換算値は作りません。

公式の必要メモリと環境別の判定
最小の動作例でも304GB。手元の環境が届くかを数値で判断できる。
公式の数値内容
304GBllama.cppの2-bit(Q2_K)で、M3 Ultra(512GB)でテスト。約18トークン/秒
約344GBMLXのoQ3e量子化
VRAM 700GB以上NVFP4(モデルカード)
約1.5TBBF16のチェックポイント(safetensors)。モデルカードは2TBと記載

MLXの構成では、コンテキスト100万トークン(BF16)のKVキャッシュ(会話の記憶)だけで約266GBが必要とも書かれています。

判定表

環境判定根拠(公式の数値)
一般的な個人PC(16〜64GB級)現実的ではない最小の動作例でも304GB
16GBクラスのVPS現実的ではない304GBの約1/19しかない
512GBのMac Studio(M3 Ultra)動作例あり(2-bit)304GBで約18トークン/秒の記載あり
GPUサーバー(NVFP4)推奨構成ありB200のノード1台
GPUサーバー(BF16)推奨構成あり(大規模)H200×8のノードを4台(TP=32)

MoEは「1トークンで動くのは42B」ですが、重みは816B全体を載せる前提です。公式の304GB〜1.5TBという数値がそれを示しています。「有効分が少ないから軽い」わけではない点に注意してください。

対応フレームワークはTransformers、llama.cpp、SGLang、vLLM、MLXです。モデルカードにはTensorRT-LLMとUnslothの記載もあります。

メモリと量子化の基本的な考え方は、VPSでOllamaを動かしたときのメモリ選びの記事にまとめています。

手元で動かせない場合の選び方

手元に512GB級のメモリがなければ、API経由で試すのが現実的です。 最小の動作例が512GB級のMacなので、大半の個人はこちらになります。

API経由で試し、料金とデータの扱いを確認する流れ
動かせない人の次の一歩は、API経由で試す前に料金とデータの扱いを読むこと。
  • API経由で使う: 報道では、Baseten・Fireworks・Groq・Together・OpenRouterなどでの提供が言及されています。これは報道ベースの情報です。Muse Spark Openを実際に扱っているか、どのモデル名で出ているかは、各社のページで調べてから選んでください。
  • 料金とデータの扱いは各社で違います: 提供元と価格は、本記事では公式情報として示せません。使う場合は各社の料金ページで、トークンあたりの料金と、入力が学習に使われるかどうかの条件を確認してください。機密情報や顧客情報を入れる前に、データの扱いの条件を読むのが先です。
  • 小さいモデルで足りるなら: 30BのMuse Glimmerが選択肢になります。単一GPUまたはMac向けと報じられています。文章中心の用途なら、こちらのほうが環境の負担は小さく済みます。
  • 手元に置く意味があるのは: 重みを自分で管理したい、画像・動画・音声を自前環境で回したい人です。

手元に置くべき人、そうでない人

向く人

  • 重みを手元で管理し、出力を社内で扱いたい人(社内利用はMaaS条件の対象外)
  • 画像・動画・音声を含む処理を自前環境で回したい人
  • 512GB級のMacやGPUサーバーをすでに持っている人
手元に置くのに向く人と向かない人の比較
自分がどちらに当てはまるかを、環境と用途で判断できる。

向かない人

  • 手元に大きなメモリ環境がなく、APIで足りる人(上の節を参照)
  • 16GBクラスのVPSで試したい人 — VPS開発環境の構築を検討する際も、まずこのセクションの判定表で環境要件を確認してください
  • 小さいモデルで足りる用途の人

今日試す最初の一歩

やることは1つです。Hugging Faceのモデルページを開き、必要メモリとライセンスを読んで、自分の環境で動くかを判断します。重みは落とさず、まず条件を見るだけです。

モデルページを開き、条件を読み、動くかを判断する3ステップ
重みを落とす前に条件を読む3ステップ。これで無駄な取得を避けられる。

公式の数値では、最小の動作例が304GBで、ライセンスは商用利用を許諾しています。最小でも304GBが要るので、手元の環境で動かせるかを、モデルページの条件で先に確かめてください。ここで確かめておけば、1.5TB級のデータを無駄に取得せずに済みます。

確認の結果、512GB級のMacかGPUサーバーがあるなら、2-bit版から試すのが入口です。手元で動かせなければ、上で挙げたAPI経由で使う道に進んでください。その場合も、先に各社の料金とデータの扱いの条件を読んでからにしましょう。