株式会社route-Dは2026年9月29日、株式会社ニッスイの受注センターが同社のAI-OCR「route-D AIデータ入力」を導入し、月間160時間以上の工数削減を達成したと発表しました。AI-OCRとは、紙やFAXの文字を読み取ってデータに変換するOCR(光学文字認識)技術に、AIの学習機能を組み合わせたものです。

ニッスイの受注センターでは、これまで取引先ごとに書式が異なる注文書を扱うたびに、読み取り位置の設定作業に大きな負荷がかかっていました。route-D AIデータ入力の導入後は、この設定作業なしで注文書を自動でデータ化できるようになったといいます。

FAXや紙の注文書を手作業で入力している会社、特に取引先ごとに書式がバラバラで受注量が多い会社に関係の深いニュースです。

本記事の内容は、route-Dの発表文と公式サイトの記載(確認日付き)に基づきます。実際にroute-D AIデータ入力を使った操作や検証は行っていません。

何が変わったか?ニッスイの受注入力、導入前後

導入前、ニッスイの受注業務には60名の担当者が携わっており、従来型のAI-OCRツールを使って注文書を読み取っていました。ただし取引先ごとに書式が違うため、対応範囲を広げるには読み取り位置の設定を都度追加する必要があり、この設定作業が現場の負荷になっていたと発表されています。

ニッスイの受注入力、導入前後の変化を示す比較図
読み取り位置の設定が不要になり、月160時間以上の工数削減につながったことを示す図

route-D AIデータ入力の導入後は、この設定作業が不要になり、月間160時間以上の工数削減につながりました。ただし、この160時間が具体的にどれくらいの処理件数や人数分にあたるのかは、発表文に算出根拠が示されていないため分かりません。60名という担当者数と合わせて、規模感の目安として受け止めるのがよさそうです。

ニッスイが導入の決め手としたのは2点です。1つは、書類ごとの読み取り位置の設定が一切不要になったこと。もう1つは、route-Dの専任担当者によるAIの一括学習サポートによって、現場が短期間で使い始められたことです(利用企業側での学習も可能とされています)。設定の手間そのものをroute-D側が引き受ける仕組みが、導入のハードルを下げたと言えそうです。

効果を受けて、route-D AIデータ入力は現在ニッスイグループ各社への展開が進んでおり、今後は蓄積した受注データを需要予測にも活用していく方針だと発表されています。

「route-D AIデータ入力」は何をするAI-OCRか

AI-OCRは、機械学習によって手書き文字や書式の違う帳票の特徴を学習することで、あらかじめ決まったフォーマットしか読み取れない従来型OCRより幅広い書類に対応できる技術です。route-D AIデータ入力も、FAX注文書・手書き伝票・非定型の帳票(取引先ごとに書式がバラバラな注文書のこと)まで対応し、フォーマットが統一されていない受発注書類の入力作業を自動化する製品だと説明されています。

route-D AIデータ入力の処理フロー図
書式がバラバラな注文書もAIが読み取り、CSV・RPA・APIで社内システムに連携する流れ

公式サイトによれば、手書き文字も高精度で読み取れるほか、文字の一部が欠けていても独自のAIが文脈から補って読み取るとされています。データの取り込み方式はCSV・RPA・APIに対応しており、社内システムへの連携方法を複数の中から選べます。

非定型帳票への対応力は製品によって差があるとされています。route-Dは自社の技術で非定型帳票に対応できると説明していますが、他社製品との比較データは確認できていません。自社で扱う帳票がどこまで読み取れるかは、個別に確認しておく必要があります。

公式サイトのFAQでは、他社のAI-OCRで課題になりがちな「マスタの行数制限」がなく、数百万行規模のマスタ処理実績があるとも説明されています。また、読み取り設定や過去データの学習はroute-D側が担当するため、現場に大きな負担をかけずに導入できるとしています。

route-Dは2022年12月設立の企業で、route-D AIデータ入力はニッスイのほか花王・鴻池運輸・コスモス薬品など100社以上に導入されていると公式サイトで紹介されています。他社の導入事例も随時公開されていますが、各社の削減時間などの数値は本記事では個別に確認していません。

自社の受注業務に当てはめるなら

導入を検討する場合、まず確認しておきたいポイントは次の4つです。

route-D AIデータ入力導入前の確認ポイント一覧
自社導入を検討する際に確認すべき4つの観点(対応帳票・連携方式・トライアル方法・料金)
確認ポイントroute-D AIデータ入力の場合
対応帳票の形式FAX注文書・手書き伝票・非定型帳票に対応(公式サイト記載)
連携方式CSV・RPA・APIによる社内システムへの取り込みに対応
トライアル・デモ「無料読み取りテスト」あり。ただし問い合わせフォーム経由(後述)
料金体系初期費用無料、月額8万円〜(利用枚数に応じ個別見積)

対応帳票の形式は、自社が扱う注文書が活字中心か手書きが多いか、フォーマットが何パターンあるかによって、実際にどこまで読み取れるかが変わってきます。連携方式も、自社の基幹システムがCSV取り込みに対応しているか、API連携ができるかによって選べる方式が変わるため、事前にシステム部門と確認しておくと話が早くなります。

公式サイトの「自社の帳票で無料読み取りテスト」というボタンをクリックすると、その場で読み取り結果が表示されるのではなく、会社名・氏名・メールアドレス・電話番号を入力する問い合わせフォームに移ります(2026年9月29日時点)。個人がすぐに自己申告で試せるセルフサービス型のツールではなく、申し込み後に個別のやり取りにつながる仕組みだと理解しておくと、話がスムーズです。法人向けの受発注システムということもあり、個人でも即日試せる一般的なAIツールの無料プランとは前提が違う点は押さえておきたいところです。

精度・操作性・セキュリティを他社製品と比較したデータは今回確認できていません。導入を比較検討する場合は、候補となる製品ごとに自社の帳票サンプルを使ったテストを依頼し、同じ基準で見比べるのが現実的です。

導入前に知っておきたい注意点

AI-OCRは高精度化が進んでいますが、認識精度が100%になるわけではなく、読み取り結果を人が確認・修正する工程は必ず必要になるとされています。route-D AIデータ入力も例外ではなく、導入後にこの確認作業自体がなくなるわけではない点は押さえておく必要があります。

AI-OCR導入前の注意点まとめ図
AI-OCR導入後も残る3つの注意点(精度・システム連携・書式統一)

また、AI-OCRで読み取ったデータも、既存の基幹システムや販売管理システムと連携できなければ、結局は手作業での再入力が残ってしまいます。route-D AIデータ入力はCSV・RPA・APIでの連携に対応しているため、この点は仕組みとして用意されていますが、自社のシステム側が対応形式を受け付けられるかは別途確認が必要です。

読み取ったデータをRPA(定型的なパソコン操作を自動で行う仕組み)と組み合わせれば、データの登録や在庫との照合まで人手を介さずにつなげられます。実際に、NTT東日本はAI-OCRとRPAを一体で提供する「AIよみとーる」というサービスを展開しており、読み取りだけで終わらせず登録まで自動化する構成は業界に実在します。route-D AIデータ入力自体もRPA連携に対応しているため、同様の使い方は選択肢として検討できます。

一部の業務から試して効果を確認してから対象を広げる進め方が有効だとされることもありますが、route-D自身がこの進め方を推奨しているかは、今回確認した公式情報の範囲では分かりませんでした。

取引先ごとに書式が異なる注文書を自社の都合だけで統一するのは簡単ではないとされています。ニッスイの場合も、取引先ごとに書類の見た目がバラバラな点が導入前の課題の一つだったと発表されており、この点は業種を問わず共通しやすい事情と言えそうです。

向いている会社・向かない会社

ここまでの内容を踏まえると、効果が出やすいのは次のような会社です。

AI-OCR導入が向いている会社・向かない会社の比較
紙・FAX中心で書式がバラバラな会社ほど効果が出やすいことを示す比較図
  • FAXや紙の注文書が今も多く残っている会社:手入力そのものをAI-OCRに置き換える余地が大きいためです
  • 取引先ごとに書式がバラバラで、担当者ごとの対応ノウハウに頼っている会社:読み取り位置の設定作業や属人的な判断が、そのまま削減対象になります
  • 受注量が多く、入力作業に複数人の工数がかかっている会社(ニッスイの事例では60名規模):担当者数が多いほど、削減できる合計時間も大きくなりやすいと考えられます

反対に、すでにWeb受注中心でデジタル化が進んでいる会社や、注文件数自体が少なく手入力の負荷が小さい会社では、月額8万円〜という料金に見合う削減効果が出にくく、優先度は下がりやすいと考えられます。

他の業務領域でのAI導入によって工数がどう変わったかは、AIエージェント業務自動化事例|営業60%増の内訳でも取り上げています。

自社に当てはまりそうな会社が最初にできることは、自社で扱う注文書の種類(手書き・非定型の有無)と連携したいシステムの形式を整理し、公式サイトの「無料読み取りテスト」から問い合わせてみることです。このテストは前述の通り、その場で結果が出るのではなく個別の商談につながる仕組みなので、聞きたいこと(対応帳票・連携方式・料金の見積もり)をあらかじめ整理してから申し込むと、やり取りがスムーズに進みます。法人向けの受発注システムということもあり、個人でも即日試せる一般的なAIツールの無料プランとは前提が違う点は押さえておきたいところです。

精度・操作性・セキュリティを他社製品と比較したデータは今回確認できていません。導入を比較検討する場合は、候補となる製品ごとに自社の帳票サンプルを使ったテストを依頼し、同じ基準で見比べるのが現実的です。

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