2026年10月7日、法務オートメーション「OLGA」を提供するGVA TECHが、新機能「ファイル参照型レビュー」を発表しました。つまり、自社のひな型や過去に結んだ契約書を渡すだけで、AIがそれを基準に契約書をレビューしてくれるようになった、という話です。これまで必要だった「プレイブック」(自社の審査基準をまとめたルール集)を、先に用意しなくても始められます。
関係するのは、契約書のチェックに時間を取られている法務・総務の担当者や、小規模事業者です。ここで書く内容は、公式のプレスリリースとOLGA公式サイトの記載に基づきます。本記事では実際のアカウント登録・利用は行っていないため、操作画面や精度については書きません。
結論:まずファイル参照型から始め、重要な契約はプレイブックを併用
迷ったときの考え方を先に置きます。

- ひな型や過去の契約書が手元にあり、基準づくりで止まっていた人は、ファイル参照型レビューから始める価値があります。公式の説明では、ひな型・チェックリスト・過去の契約書を参照させるだけで、AIが分類と重み付けをして方針を立て、照合して審査します。
- 重要度の高い契約は、プレイブック参照型との併用が向きます。公式は、ファイル参照型ではAIがその都度ファイルから基準を作るため、基準にブレが出たり、自社基準と必ずしも一致しなかったりする場合がある、と書いています。プレイブック参照型は確認漏れが起きにくく、一貫した指摘ができるとも書かれています。
- 今日できる最初の一歩は、公式サイトの資料請求フォームか問い合わせフォームから、自社の契約書でどう使えるかを聞くことです。無料トライアルの案内は、公式サイトのトップページと料金ページには記載がありません。
契約の重要度で使い分けたい人には、ひな型参照と従来方式の併用が公式に案内されている
OLGA をダウンロードする(公式)何が変わったのか:プレイブック前提から、手元の資料が基準へ

Before:先に審査基準を整えておく必要があった
従来のOLGAのAI契約レビューは、詳細なルールをまとめたプレイブックや審査マニュアルを事前に整備して設定する方式でした。公式は背景として、法改正や社内基準の変更に合わせて、これを継続的に改訂し続ける負担も課題だったと説明しています。
なお、9月9日付の別のリリースによると、プレイブックはGVA TECHの担当者が、契約書ひな形と過去のレビュー実績をもとに作成します。つまり、利用者が一から書くというより、「材料を渡して基準を整えてもらう」工程でした。ここでの負担は「作る手間」というより、事前に整えて、変わるたびに改訂し続ける工程と捉えるのが公式の説明に近いでしょう。
After:ひな型・チェックリスト・過去契約が基準になる
ファイル参照型レビューでは、自社のひな型、チェックリスト、過去に締結した契約書を参照させます。公式の説明では、それをAIが分類・重み付けし、方針を決めて照合します。さらに、Web上の解説記事、省庁の公開ガイドライン、法令情報も参照用ファイルとして組み込めるとされています。
「プレイブック不要」は10月7日が初出ではない
ここは読者が混乱しやすい点です。9月9日付のリリースにも、プレイブックがなくても、ひな型・チェックリスト・過去の契約書をそのまま読み込ませてレビューできる、と書かれています。10月7日のリリースは、これを「ファイル参照型レビュー」という名前の機能として改めて発表したものです。
10月7日のリリースは9月9日に触れていないため、両者の差分は公式からは分かりません。この記事では「10月7日に初めて可能になった」とは書かず、10月7日付で公式が機能名と位置づけを示した、という事実にとどめます。
用語をかみ砕く:プレイブックとは、何を見て何と比べるのか
プレイブックは、「この条項はこの条件ならOK、この表現ならNG」といった自社の判断基準を、あらかじめ整理した一覧です。契約レビューの経験者の頭にある「いつもの基準」を、AIが使える形にしたものと考えると分かりやすいでしょう。

ファイル参照型での「参照する」は、次のイメージです。
| 渡すもの | AIが何をするか(公式の説明の範囲) |
|---|---|
| 自社のひな型 | 自社が標準とする条文の形を基準にする |
| チェックリスト | 確認すべき観点として使う |
| 過去に締結した契約書 | 自社が過去に受け入れてきた条件を基準にする |
| 外部の解説・ガイドライン・法令情報 | 参照用ファイルとして組み込む |
渡した資料からAIがその都度基準を作る、という点が大事です。プレイブックのように「固定された基準」ではないため、同じ資料でも指摘の細かさが揺れる可能性があると、公式自身が認めています。
プレイブック方式との違い:誰が作り、何を渡し、どこまで任せるか
公式の説明を、読者が選ぶときの軸に並べ直しました。

| 観点 | ファイル参照型(10月7日発表) | プレイブック参照型(従来) |
|---|---|---|
| 基準の作り方 | AIがその都度、ひな型・チェックリスト・過去契約から生成 | 事前に作ったプレイブック。9月9日のリリースではGVA TECHの担当者が作成 |
| 用意するもの | 参照ファイル(自社資料のほか、外部ガイドラインや法令情報も可) | 材料(ひな形・過去のレビュー実績)を渡す |
| 一貫性 | ブレや、自社基準とのズレが出る場合がある(公式) | 確認漏れが起きにくく、一貫した指摘ができる(公式) |
| 向く場面 | まず手軽に始めたい、契約の種類が多い | 重要度の高い契約、指摘を揃えたい契約 |
「向く場面」の行は、公式の一貫性に関する説明から読み取れる使い分けとして、weeveeが整理したものです。公式が併用を認めている点(契約の重要度に応じてハイブリッドで使える)とも合います。
読み込ませてレビューするときの流れ
公式が示している範囲で、流れを順に書きます。ファイル参照型の具体的な画面や操作手順は公式発表に記載がないため、9月9日のリリースの内容も含めて整理します。

- 渡す:自社のひな型・チェックリスト・過去契約など(10月7日リリース)
- 指示する:背景情報や条項ごとの修正方針をテキストで伝える(9月9日リリース)
- 返ってくる:条文ごとのOK/NGと根拠・理由、修正文の提案、修正理由コメント(9月9日リリース)
- 人が判断する:AIの指摘を確認して、最終判断をする
対応するファイル形式や、参照ファイルの数・容量の上限は、10月7日のリリースに記載がありません。OLGAのトップページにはWord・PDF・英文契約を扱う記載がありますが、それがファイル参照型レビューにも当てはまるかは、公式の記載からは分かりません。
修正文・Word反映・2度目以降の交渉:業務の流れのどこが変わるか
9月9日付のリリースによると、OLGAのAI契約レビューは、リスクの指摘だけで終わりません。自社基準に沿った修正文を提案し、社内外向けの修正理由コメントを自動で生成し、Wordに自動で反映します。相手方から修正案が返ってきたあとの2度目以降の交渉も、過去のやり取りや修正経緯を踏まえてサポートするとされています。

受領から承認までの流れに当てると、次のようになります。
| 場面 | 担当者の作業 | AIが関わる範囲(9月9日リリース) |
|---|---|---|
| 受領 | 契約書を受け取り、レビューに回す | 基準に沿ってリスクを検知 |
| 確認 | 指摘が妥当かを読む | 条文ごとにOK/NGと根拠を提示 |
| 修正案 | 修正文を作り、相手に説明する | 修正文と修正理由コメントを提案、Wordに反映 |
| 再交渉・承認 | 相手の修正案を見て最終判断 | 過去の修正経緯を踏まえてレビュー |
ここで注意したいのは、10月7日のリリースにはWord反映や2度目以降の交渉への言及がないことです。これらがファイル参照型レビューでも使えるかは、公式の発表からは分かりません。導入を検討するなら、最初に聞くべき点の一つです。
判断過程の見える化:人が確認しやすくなる点
9月9日付のリリースによると、条文ごとにOK/NGと、その根拠・理由が示されます。AIの指摘をうのみにせず、「なぜそう判断したのか」を人が追えるため、見当違いの指摘に気づきやすくなります。

ただし、これもファイル参照型でどう表示されるかは、10月7日のリリースに記載がありません。AIレビューは判断の補助であり、最終判断は法務担当者や弁護士が行うものです。この記事も法的助言ではありません。
料金と全社利用:公式で分かる範囲
9月9日付のリリースでは、料金は利用回数ベースで、アカウント数は無制限とされています。公式の料金ページは「初期費用+月額費用」の体系で、次のように説明されています。

- 初期費用には、環境構築支援、会社展開支援、データ移行、オンボーディングのコンサルティングが含まれる
- 月額は、法務アカウント(増員時に追加)やオプション機能の追加で変わる
- 事業部アカウントは、基本機能ならアカウント不要で使える
- 複数年契約割引、セット割引、少人数法務割引がある
具体的な金額や、利用回数の条件はページに記載がなく、見積りは問い合わせになります。ファイル参照型レビューが料金のどこに含まれるかも、10月7日のリリースには書かれていません。
事業部が使える構成になっているため、法務部門だけでなく、事業部のNDA審査のような場面まで広げて使う想定と読めます。ただし、これは公式の説明からの読み取りであり、実際の運用の使い勝手は確認していません。
向く人・向かない人
向く人
- 契約書のひな型や、過去に締結した契約書が社内に蓄積している
- プレイブックの事前整備が重く、AIレビューの導入が止まっていた
- 契約の種類が多く、まず幅広くレビューを回したい

向かない人(または慎重に進めたい人)
- 過去契約が少なく、基準にできる資料が乏しい。参照元が少ないと、AIが作る基準も頼りないものになりやすいと考えられます(これはweeveeの一般的な見立てで、公式の記載ではありません)
- 重要な契約で、毎回同じ観点の指摘を揃えたい。この場合は、一貫した指摘ができるとされるプレイブック参照型か、併用が合います
申し込み前に公式へ聞く4つの項目
OLGAには資料請求フォームと問い合わせフォームがあります。公式の記載から分からない点を、次の4つにまとめました。
- 料金:金額と、利用回数の単価・上限。ファイル参照型レビューがどのプランに含まれるか
- データの扱い:入力した契約書がAIの学習に使われるかどうか。セキュリティページにはISMS(ISO27001)認証、多要素認証、通信の暗号化、IP制限、第三者による脆弱性診断などが載っていますが、AI学習への利用については記載がありません
- 対応ファイル形式:ファイル参照型で使えるファイルの種類と、数・容量の上限
- 機能の範囲:ファイル参照型でも、修正文のWord反映、2度目以降の交渉、OK/NGの根拠表示が使えるか
もっと詳しく:AI契約レビュー以外のOLGAの機能
OLGAは契約レビューだけの製品ではありません。公式の機能ページには、AI契約レビューとして次の6項目が載っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自社基準のAIリスクチェック | 今回の話の中心 |
| 弁護士基準のAIリスクチェック | 弁護士の基準によるチェック |
| 新旧文書比較 | Word/PDFなど、OCR対応 |
| 形式チェック | 表記ゆれ、条番号のずれ |
| 条文検索 | 数百種類の契約書が対象 |
| ドラフト作成 | 数百種類のひな型(法律事務所・業界モデルを含む) |
トップページには、案件の進行管理、依頼者とのやりとり、契約書管理などの利用場面も並び、Salesforce連携のページもあります。契約レビューは、案件管理から契約管理までを扱う法務SaaSの一部、という位置づけです。
同じ法務分野でのAI活用の例としては、三菱UFJ信託銀行のLegalBrain導入の記事も参考になります。
次の一歩:資料請求で「自社の契約書でどう使えるか」を聞く
ファイル参照型レビューは、プレイブックの事前整備が壁だった組織にとって、手元の資料から始められる入口になります。一方で、公式自身が基準のブレを認めているため、重要な契約はプレイブックとの併用を前提に検討するのが現実的です。
今日やるなら、公式の資料請求フォームから、上の4項目(料金・データの扱い・対応ファイル形式・機能の範囲)を問い合わせるところまでです。

