OpenAIが、入力を評価して「どれに当てはまるか」だけを返す Decisions API を、全開発者向けの公開ベータとして出しました(公式コミュニティの告知は2026-10-06)。文章は作りません。返すのは、条件を満たす確率、選んだ選択肢、段階評価の数値です。公式は、GPT-6 Luna を Responses API 経由で使うより最大10倍速いと説明しています。

本記事は公式ガイド、モデルページ、料金ページ、公式コミュニティの告知の整理です。Decisions API を実際に呼んだ結果ではありません。速度の数字も公式の説明であり、自分では計っていません。

つまり何が起きたのか:「文章を作らない」API が加わった

アプリの中には、文章を作る前に決めることがよくあります。この問い合わせはどの部署か、この画像に傷はあるか、この不具合はどれくらい深刻か、といった判断です。これまでは自前のルールで書くか、大きなモデルに文章で答えさせて結果を読み取っていました。

これまでの方式とDecisions APIの判断のやり方・返り値・速度の比較
文章で答えさせて読み取る方式と、判定だけを数値で受け取る方式の違いが分かる。

Decisions API は、この判断だけを専用のエンドポイント(POST /v1/decisions)に任せるためのものです。公式の説明では、テキスト、画像、またはその両方を評価し、型の決まった答えを返します。用途は分類、ルーティング(振り分け)、優先度付けです。

これまでDecisions API
判断のやり方自前のルール、または大きなモデルに文章で答えさせる判定専用のAPIに任せる
返ってくるもの文章(読み取って整える処理が要る)確率・選んだ値・段階の数値
速度(公式の説明)基準:GPT-6 Luna を Responses API 経由で使う場合その基準より最大10倍速い

迷ったらこれ

  • 複数の振り分けを持つアプリを作っている人は、判断が1か所だけの小さな処理から Decisions API に置き換えてみてください。
  • 根拠は、公式が速度を最大10倍としていること、そして料金が入力 $0.10/100万トークンで、出力トークンは課金なしと案内されていることです(出典は公式ガイドとコミュニティ告知)。500トークンの入力なら、単価からの換算で1万回の判定が約 $0.50 です(実際の請求額ではありません)。
  • 最初の5分は、公式ガイドで gpt-6-luna と3種類の判定の定義を読むことです。次に、自分のアプリで「選択肢から1つ選ぶ処理」を1つ決めます。
  • モデルを1つしか使わないアプリや、ベータの仕様変更を許容できない本番用途の人は、今は急がなくて構いません。

何ができるのか:3種類の判定

判定は3種類です。使い分けは「条件か、分類か、レベルか」で決まります。

predicate・choice・scoreの返すものと向く場面の比較
「条件か、分類か、レベルか」で判定の種類を選べる。
種類何を返すか公式の例向く場面
predicate(条件)条件を満たす確率(0〜1)「傷があるか」→ probability 0.92はい/いいえで決める処理
choice(分類)選んだ値、各選択肢の確率、confidence(信頼度)苦情の部署振り分け → billing、confidence 0.93順序のない選択肢から1つ選ぶ処理
score(段階評価)レベル番号の確率加重平均、各レベルの確率、confidence深刻度(0=見た目のみ/1=回避策あり/2=作業不能)→ 1.1順序のあるレベルで測る処理

score の 1.1 は、各レベルの確率で重みづけした平均値です。0に近いほど軽く、2に近いほど重い、という目盛りで、この例は「1(回避策あり)あたり」と読めます。処理を分けるなら、数値の範囲ごとに対応を決めます。

リクエストと返り方:3つの要素だけ

リクエストの要素は model、input、questions の3つです。使えるモデルは公開ベータの時点で gpt-6-luna のみです。

model・input・questionsから部署と深刻度を同時に判定する流れ
model・input・questions の3つを渡せば、独立した質問をまとめて判定できる。
要素中身
modelgpt-6-luna
input文字列、またはテキストと画像を含む user メッセージ
questions判定の種類、指示、許容値(選択肢やレベル)

SDK では client.decisions.create(...) で呼びます。公式の Python 例は、input に「I was charged twice for my order.」(注文で二重に請求された)を入れ、choice の department で振り分けるものです。選択肢は billing(支払い・請求書・返金)と other(上記以外の依頼)の2つです。

ここで大事なのは other です。どれにも当てはまらない入力が来たとき、無理に既存の選択肢へ押し込まないための逃げ道です。公式例にこの形が載っているので、自分で選択肢を作るときも最後に1つ置いておくと安全です。

画像の渡し方には制約があります。インラインの base64 data URL だけが使え、HTTP/HTTPS の URL と file_id は使えません。input_text と input_image は同じ user メッセージに混ぜられます。

互いに独立した質問は、1回のリクエストの questions 配列にまとめられます。たとえば「部署」と「深刻度」を同時に聞けます。前の判定結果で次の質問が変わる場合は、リクエストを分けます。

他の API との使い分け

公式の説明を表にすると、次のとおりです。

Decisions APIとResponses APIの使い分け比較
やりたいことが判定か、自由な出力・外部処理かで使うAPIが分かれる。
やりたいこと向く API
二値の確率、固定の選択、ルーブリック(採点基準)での採点Decisions API
任意の JSON スキーマで出力させたいResponses API + Structured Outputs(出力を指定したJSONの型に揃える機能)
ツール(関数)を実行させたいResponses API + Function Calling(モデルが外部の関数を呼ぶ仕組み)

見分け方はシンプルです。出力が「確率・選択肢・段階」のどれかに収まるなら Decisions、自由な形のデータを作らせたり外部の処理を呼ばせたりするなら Responses です。

速度の「最大10倍」は、比較の基準が決まっています。コミュニティ告知では、GPT-6 Luna を Responses API 経由で使う場合との比較です。ほかのモデルや自前のルール処理と比べた数字ではありません。応答時間そのものの数値(何ミリ秒か)は、公式のガイドや告知には載っていません。「約150ms」のような絶対値を見かけても、公式の記載ではない点に注意してください。

問い合わせの振り分けなど判定だけ要る人には、入力$0.10/100万トークンで出力課金なし

OpenAI Decisions API の料金プランを確認する(公式)

料金と提供範囲

項目内容
提供状況公開ベータ(全開発者向け)。ガイドには「GAは近日」と記載
使えるモデルgpt-6-luna のみ
入力料金$0.10/100万トークン
出力トークン・キャッシュの読み書き課金なし
適用される割増リージョン処理の割増と長文脈の倍率は適用される
データ面ZDR(ゼロデータ保持)と HIPAA に対応(対象顧客)。データレジデンシーは米国と欧州(EEA・スイス)

出力が課金されないので、費用は入力の量でほぼ決まります。単純な計算例です。1回の判定で入力が500トークンなら、100万トークンで2,000回、費用は $0.10 です。1万回なら $0.50 になります。これは単価からの換算で、実際の請求額ではありません。リージョン割増や長文脈の倍率が付くと変わります。

Decisions APIの料金と提供範囲のまとめ
入力の量だけ見れば費用の見当がつく。割増は別途かかる。

注意点が2つあります。まず、公式の料金ページには Decisions API の項目がまだなく、料金の根拠はガイドとコミュニティ告知です。次に、レート制限は Decisions 専用の記載が見当たりません。gpt-6-luna のモデルページには Build tier で 5,000 RPM/2M TPM、Launch tier で 10,000 RPM/10M TPM とありますが、これが Decisions にそのまま当てはまるかは、使う前にアカウントの画面で確かめてください。

ほかの OpenAI 製品の料金体系を参考にしながら見積もりたい場合は、GPT-6.1 Solとは|Astra比1/5価格で乗り換え判断で複数モデルの単価を比較できます。

使いどころと設計の注意

公式の例にあるのは、苦情の部署振り分け、傷の有無、深刻度の採点です。次の3つは公式の例ではなく、同じ型に当てはめた「想定される使い方」です。

設計で気をつける3つのポイント
選択肢の作り方、閾値の決め方、確信が低いときの扱いの3点を押さえる。
  • 問い合わせ窓口:内容を choice で分類し、担当部署のキューに振り分ける。
  • モデルの切り替え:質問の難しさを score で測り、簡単なら軽いモデル、難しければ大きなモデルに回す。
  • 画像つきの報告:写真に写っている不具合の有無を predicate で判定する。

実装例として、AIエージェント業務自動化事例|営業60%増の内訳のようなケーススタディを参考にすると、判定の実務的な使い道が見える。

設計で気をつけたいのは次の3点です。

  1. other を置く。 想定外の入力の逃げ道になります。
  2. 閾値(しきいち:どの数値から先を自動処理にするかの境目)は自分のデータで決める。 公式は、アプリ側のラベル付き例を使い、誤検出と見逃しのコストを比べて、ルーティングやフィルタの閾値を決めるよう案内しています。
  3. 確信が低いものは別扱いにする案を持つ。 たとえば confidence が低いときに人の確認へ回す運用は、公式の記載ではなく、上の閾値の考え方の応用です。

向いている人・向かない人

向く向かない
振り分けが遅い、または複雑で保守に困っているモデルを1つしか使わない
複数のモデルやツールを使い分けているベータの仕様変更を許容できない本番用途
分類やスコアリングを大量にさばきたい自由な文章やJSONを作らせたい(Responses API 向き)
画像を base64 で渡せる画像を URL や file_id で渡したい

初期の利用者からは、choice の確率の較正(数値が実際の当たりやすさと合っているか)が難しい、predicate のほうが安定している、という声が出ています。公式の見解ではなく、コミュニティ告知のスレッドでのユーザー報告です。ベータなので、本番に入れる前に自分のデータで確率の信頼度を見ておくのが安全です。

Decisions APIが向く人と向かない人の比較
自分の用途が左右どちらに近いかで、今試すかどうかを判断できる。

今日試す最初の一歩

以下は公式の案内に沿った進め方で、私たちが手を動かして確かめた手順ではありません。

Decisions APIを試す5つの手順
判断が1か所のアプリで、手順1〜3まで進めば今日の一歩になる。
  1. 公式ガイドで3種類の判定の定義と、画像入力の制約を読む。
  2. アプリの中から、「選択肢から1つ選ぶ」処理を1か所だけ選ぶ。
  3. 選択肢と指示を書き、最後に other を入れる。
  4. 既存のログからラベル付きの例を用意し、結果と照らして閾値を決める。
  5. 振り分けの判定だけ差し替えて、元の処理と結果を並べて見比べる。

今日やることは1つだけです。判断が1か所のアプリで、手順1〜3まで進めること。 公式の例(苦情の部署振り分け)は、そのまま自分の入力に置き換えやすい形です。

もっと詳しく

Decisions APIとJevの入力料金・出力料金・画像入力の比較
入力料金はJevが安く、画像入力の仕様はDecisions APIのほうが明確。

TypeSafe Jev との比較

同じ「確率つきの型付き判定」を返すサービスに、TypeSafe の Jev があります。公式トップの記載と二次情報から分かる範囲で並べます。

項目Decisions APIJev
入力料金(100万トークン)$0.10$0.042
出力料金課金なし無料(二次情報でも一致)
画像入力対応(base64 data URL のみ)公式トップに記載なし
最大選択肢数公式に記載なし公式トップに記載なし
速度の公称Responses API 比で最大10倍自社条件で約0.114秒 vs 8.566秒と比較

入力料金だけで見れば Jev のほうが安く、画像を扱うなら Decisions API の仕様のほうが明確です。Jev の速度比較は自社の条件で出した数字で、Decisions API の「最大10倍」と同じ物差しではありません。選ぶ軸は「画像が要るか」「料金」「確率の見え方」です。Jev の入力形式や選択肢の上限は、申し込み前に公式で確かめてください。

gpt-6-luna のモデル仕様

モデルページには、コンテキスト 1,050,000 トークン、最大入力 922,000、最大出力 128,000、知識カットオフ 2026-05-18、入力はテキストと画像、と記載があります。ただし対応 API として載っているのは Chat Completions、Responses、Batch で、Decisions は並んでいません。ページ上の出力単価 $0.5/100万は通常の API の価格で、Decisions の「出力課金なし」とは別です。

ほかの発表を知りたい人へ

同じ時期の OpenAI の開発者向けの発表は、OpenAI DevDay 2026まとめ|今日使える変更点にまとめています。

仕様が変わる前提で

Decisions API はベータで、GA は近日とされています。条件や仕様は変わりうるので、組み込む前に公式ガイドと料金の最新の記載を確認してください。