株式会社Rabona AIが2026年9月28日、受電と架電を1体のAIが状況に応じて切り替える「ブレンド型AIコールセンター」を国内初として提供開始したと発表した。これまで受電専用・架電専用に分かれていたAIコールセンターが、1つのAIで両方をこなす形にまとまった格好だ。

対象になるのは、電話対応が業務のボトルネックになっている企業だ。コールセンターを自社運営・委託している会社はもちろん、EC・不動産・保険・予約業務など、日々の入電・架電が多い事業者ほど影響は大きい。一方、電話対応の件数自体が少ない個人開発者やフリーランスには、直接の関係は薄い。

先に要点だけ言うと、受電と架電を別々の担当・ツールで運用している企業は、Rabona AIのブレンド型AIコールセンターを比較検討先に入れる価値がある。公表事例では「入電の約9割をAIで完結」「電話対応の約8割を削減」としている(2026年9月28日時点・公式発表)。気になった場合の最初の一歩は、自社の電話対応の棚卸しと、公式サイトからの無料デモ予約だ(詳しくは記事末尾でまとめる)。

本記事は公式発表・公式サイトの記載(確認日: 2026年9月28日)にもとづく。サービスを実際に契約・利用しての検証は行っていない(無料トライアルの提供がなく、体験には個別のデモ予約が必要なため)。

背景 — なぜ受電と架電を1台に集約する必要があるのか

コールセンター業務には、外部からの入電に対応する仕事と、折り返し・予約確認・リマインドのために自社から架電する仕事の両方がある。多くの企業では、この2つを別の担当者・別のシステムで運用してきた。後述するソクコムのように、受電・架電・即応対応をそれぞれ専用の製品ラインとして提供するサービスが目立つのも、この分業が業界の前提になっていたことの裏返しといえる。

受電と架電を分業するとコストがかかることを示す図
受電と架電を分けて運用すると、人員の融通と教育の両方にコストがかかる。

分業には人員のやりくりの難しさがつきまとう。受電が集中する時間帯に架電担当が手すきになっていても、業務やシステムが分かれていれば、その人員をすぐ受電に回すのは難しい。逆に架電が必要なタイミングで受電担当に余裕があっても同じことが起きる。両方の業務量に合わせて人員を確保しようとすると、結果的に必要以上の人数を抱えやすくなる。

新しく担当者を育てる場合の教育コストも軽視できない。受電時の応対と架電時の話し方はそれぞれ別に習得することが多く、両方をこなせる担当者を育てるにはその分の期間とコストがかかる。

Rabona AIの導入事例は、こうした分業のコストの大きさを裏付ける材料にもなっている。株式会社宝宮設備では1日20〜50件の入電の約9割をAIが完結し、株式会社BizPlatformでは月間15万コールの自動化によって人件費が月あたり約1,000万円減ったとしている(いずれも公式サイトの事例・2026年9月28日確認)。受電と架電を1つのAIに任せられれば、こうした人員のやりくりの手間そのものが減る、という理屈になる。

Rabona AIの「ブレンド型」は、この「受電と架電を分けて運用する」という前提そのものを崩す提案だ。まず、これまで実際にどう分かれて運用されてきたかを具体的に見ていく。

これまでは何が当たり前だったか — 受電AIと架電AIは別々の契約が一般的

AI電話サービスの市場では、受電と架電を別々の製品・契約で提供するケースが目立つ。たとえば即時架電サービスの大手ソクコムは、「架電AIエージェント」「受電AIエージェント」「即電AIエージェント」「架電コールセンター」「受電コールセンター」という5つの個別ラインを用意しており、同一のAIが両方を切り替えて対応する仕組みは案内されていない(2026年9月28日確認)。

従来の別契約とRabona AIの1つのAIを比べた図
新しさは両対応の有無ではなく、1つのAIが状況を見て役割を切り替える点にある。

架電専用として2025年12月に登場した「JAPAN AI CALL」も、同時点のリリースでは「今後はインバウンド機能の開発を進め、受電業務の自動化も実現予定」と明記されており、当時は架電専用のサービスだった。その後、受電機能が実際に追加されたかどうかは、2026年9月28日時点の公式サイト・リリースの記載からは確認できなかった。

一方で、「受電も架電も両方できるサービス」自体は新しいカテゴリではない。AI電話サービス35件を比較した記事(2026年1月公開)では、受電・架電の両対応を「総合型」という分類名で扱い、複数のサービスを例示している。つまり「両対応をうたうサービス」自体は、すでに市場に存在する。ただし「両対応」の中身は一様ではない。あらかじめ設定したシナリオで受電・架電の対応領域を切り替える製品もあれば、Rabona AIのようにAIが通話状況を見て動的に判断し切り替える製品もあり、仕組みは分かれる。

Rabona AIの発表が示す新しさは、両対応の有無そのものではなく、「1つのAIが通話状況を見て役割を動的に切り替える」という運用の形にある。公式リリースの説明では「受電が多い時間帯は受電を優先し、落ち着いたら折り返し・予約確認・リマインドなどの架電を進めます」としている。受電・架電を別チームや別システムで並走させるのではなく、手が空いたタイミングで同じAIが架電に回る、という位置づけだ。

「ブレンド型」とは何か

「ブレンド型」という言葉は公式のネーミングで、要は「1つのAIが受電と架電の両方の役割を、状況に応じて切り替えて担当する」という意味だ。電話が立て込んでいる時間帯はAIが受電に専念し、コールが落ち着いてきたら同じAIが自動で折り返しや予約確認、リマインドの架電に切り替わる。人間のオペレーターを「受電班」「架電班」に分けて配置する代わりに、1つのAIが手の空いたタイミングを見て両方をこなすイメージに近い。

IVRとAI電話応対の違いを比べた表
AI電話はボタン操作のIVRと違い、話した内容に応じて進む。

公式サイトでは、この仕組みを「人間と聞き分けられないほど自然に会話するAIエージェント」と説明している(音声技術の技術的背景は後段で扱う)。ここでいうAI電話は、「ご用件に応じて1番を押してください」のようなボタン操作の自動音声案内(IVR)とは仕組みが異なる。

比較項目IVR(従来の自動音声案内)Rabona AIのようなAI電話応対
操作方法プッシュボタンでの選択音声での自然な対話
対応力あらかじめ決めた分岐のみ相手の発話内容に応じた対応
顧客側の負担ガイダンスを聞く待ち時間がある普段どおり話すだけで進む

対応フローは「電話に出る→ヒアリング→SMS送信→メール送信→CRMに記録」のように、通話後の作業まで含めて自動化できるとしている(公式サイト記載)。公式が挙げる機能は、自然なAI受電/AI自動応答(Q&A)/SMS自動送信/メール送信/CRM連携・顧客管理/フロー作成(条件分岐)/文字起こし・要約/録音・履歴/あふれ呼・電話転送/予約受付・台帳連携/多言語対応/通知連携の12項目だ。外部システムの連携先として、kintone・HubSpot・Salesforce・Slack・LINE WORKS・Microsoft Teams・Chatworkが挙げられている。すでに使っているCRMやチャットツールがあれば、通知や記録の連携先としてイメージしやすいだろう。

「国内初※」の注記を確認する

リリースのタイトルには「【国内初※】」という表記がある。この※には次の注記が付いている(原文)。

国内初の注記が自社調べであることを示す図
「国内初」は絞り込んだ条件の組み合わせについての、自社調べである。

「2026年9月時点、自社調べ。国内で提供されているAI電話・AIコールセンターサービスを対象に、各社公式サイト・プレスリリース等の公開情報を調査。同一のAIが受電と架電を状況に応じて切り替えるブレンド運用に対応し、通話後の記録・SMS送信・外部システム連携まで自動で行うAIコールセンターサービスとして。」

つまり「国内初」は第三者機関の調査ではなく、Rabona AI自身による自社調べだ。対象も「同一のAIが受電・架電を動的に切り替え、かつ通話後の記録・SMS・外部連携まで自動化している」という、かなり絞り込んだ組み合わせについての「初」であり、「受電も架電もできるサービスの中で初」という意味ではない点に注意したい。前述の「総合型」というカテゴリ自体は既存のものだからだ。

なお、公式サイトのFAQには「電話を受けるだけでなく、こちらから架けることもできますか?」という質問への回答として、「できます。受電(受ける)対応がメインですが、未対応分の折り返しや確認のご連絡など、こちらから架けるアウトバウンドにも対応します」という説明もある。リリースの「状況に応じて切り替える」という打ち出し方に比べると、公式サイト側の説明は「受電がメイン」というやや控えめな位置づけで、両者にはニュアンスの差がある。導入を検討する場合は、この温度差を踏まえて自社の用途(受電中心か、架電も同程度に必要か)を問い合わせで確認するとよさそうだ。

東大発の音声技術という技術的背景

公式の説明では、「東京大学発の音声技術をもとに、相槌や話の途中の割り込みにも自然に応じます」としている。声の質だけでなく、話す間や反応のテンポまで含めて自然な会話を目指した設計だという。

東大発の音声技術について公式の記載範囲を整理した図
公式が説明している範囲と、記載のない範囲を分けて読める。

ただし、どの研究室の技術か、大学からの技術移転契約があるかといった技術的な詳細は、リリース・公式サイトのいずれにも記載がない。代表取締役の鳥邉翔氏は東京大学卒業後、同大学院農学生命科学研究科を修了しているが、この専攻は農学生命科学であり、音声工学の研究室出身であるとは明記されていない。「代表が音声研究をしていた」という説明と「音声技術のベースが東大発」という説明は、公式情報の上では別々のものとして扱われている点を区別しておきたい。

導入効果 — 公式が示す数値

料金の具体的な金額はリリース・公式サイトのいずれにも記載がなく、月額基本料金に従量課金を組み合わせる体系で、一部の顧客には成果報酬型(アウトカム型)のプランも用意しているとだけ説明されている。公式サイトの「料金表と費用相場」というページも、Rabona AI自身の価格表ではなく他社の料金相場を紹介する解説記事になっており、コールセンター規模の導入は個別見積もり(非公開)とされている。

公式サイトの導入事例ページ。3社の数値に番号を付けた画面
公式の導入事例ページ。3社それぞれが削減率・完結率・コール数と人件費を公表している。

一方で、導入効果については公式が具体的な事例を公開している(2026年9月28日確認)。

  • 株式会社ZAP(配送・設置工事):配達日の確認電話をAIに任せ、電話対応の約8割を削減
  • 株式会社宝宮設備(電力・ガス・設備):1日20〜50件の入電の約9割をAIが完結
  • 株式会社BizPlatform:月間15万コールを自動化し、人件費は月あたり約1,000万円減、売上は150%に

累計では「導入企業50社以上・累計500万コール以上(2026年9月末時点)」としている。他社の即時架電サービスの中には、問い合わせ直後の対応スピードと商談化率・成約率の関係をデータで示しているところもあるが、Rabona AI側が公開している指標は対応完結率や工数削減額、人件費削減額が中心で、商談化率・成約率のような数値は2026年9月28日時点で確認できなかった。

向いている企業・向かない企業

公式の事例を見る限り、向いているのは次のような企業だ。

向いている企業と関係が薄い企業を並べた表
自社の電話業務が当てはまるかを、この表で見分けられる。
  • コールセンターを自社運営、または外部委託している企業
  • EC・不動産・保険・予約業務など、日々の入電・架電の件数が多い事業者
  • 受電担当と架電担当を別チーム・別ツールで運用していて、その切り替えの手間やコストが気になっている企業

逆に、電話対応の件数自体が少ない個人開発者やフリーランスにとっては、直接の関係は薄い。対象企業の従業員数や通話量の下限といった条件はリリース・公式サイトのいずれにも記載がなく、小規模事業者が対象に含まれるかどうかは、現時点では問い合わせで確認するしかない。

電話対応以外の領域でも、AIエージェントによる業務自動化のニュースは相次いでいる(AIエージェント業務自動化の事例、レポート自動化など)。電話業務が自社の自動化の優先順位としてどのくらい高いか、まず整理してみるとよいだろう。

気になったら最初の一歩

個人向けの無料トライアルやセルフサインアップは用意されていない(2026年9月28日確認)。導入の入口は「無料デモの予約」「資料ダウンロード」「問い合わせフォーム」の3つで、いずれも会社名や電話番号などを入力する形になっている。導入までの期間やサポート体制について、リリース・公式サイトに具体的な記載はなく、気になる場合はデモ予約時に直接確認するのが早い。

棚卸しから無料デモ予約までの2ステップ
まず自社の電話業務を棚卸しし、当てはまれば無料デモを予約する。

まずやることは2つだけだ。

  1. 自社の電話対応(受電・架電)で、担当やツールを分けている業務がないか棚卸しする(15分程度でできる)
  2. 棚卸しで当てはまる業務があれば、公式サイトから無料デモを予約する(5分程度)

Rabona AIの公表事例では、株式会社宝宮設備で1日20〜50件の入電の約9割をAIが完結し、株式会社ZAPでは電話対応の約8割を削減できたとしている(2026年9月28日時点・公式発表)。受電と架電を別の担当・別のツールで回していて、そのつなぎ目にコストや手間を感じている企業には、Rabona AIブレンド型AIコールセンターを比較検討先の一つに入れる価値がある。

受電業務では1日20〜50件の入電の約9割をAIが完結した事例も(公式サイトで無料デモ・資料請求)

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