ワークスアプリケーションズ(WAP)は2026年9月29日、自社開発のAIエージェント「AquaAgent」を中核に、大手企業向けの業務基盤「HUE ArielAirOne Business Platform」(以下、HUE Ariel BP)をAIエージェント統合基盤へ強化すると発表しました。

つまり何が起きたのかというと、もともと標準搭載されていたAquaAgentを、レガシーシステムの刷新・社内の判断ノウハウの蓄積・アクセス権限に連動した情報参照制御という3つの軸で基盤の中核に据え直した、という発表です。対象は基幹システムやワークフローを抱える大手企業の情報システム部門・DX推進部門で、個人開発者や小規模事業者向けの発表ではありません。今日できる最初の一歩は、公式発表ページで対象範囲を確認し、必要であれば問い合わせや資料請求に進むことです。

法人向けの業務基盤という性質上、この記事は公式発表・製品ページ・第三者レビューサイトの記載(確認日付き)にもとづく整理です。実際にログインして操作するような実測は行っていません。

HUE ArielAirOne Business Platformとは(3層構造をかみ砕く)

HUE Ariel BPは、次の3つの機能層を持つ統合業務基盤です。

HUE Ariel BPの3層構造を示す図
HUE Ariel BPは基本機能・グループウェア・ワークフロー/開発基盤の3層で構成され、AquaAgentはこの全体に組み込まれる
  • 基本機能:ユーザー・組織管理、アクセス権限管理、統合全文検索、モバイルアクセス。「誰が何を見られるか」を一元管理する土台です
  • グループウェア:カレンダー・施設予約、掲示板・社内通知、アドレス帳、ファイル管理。日々の情報共有やスケジュール調整を担います
  • ワークフロー/開発基盤:フォーム設計、ビュー設計、ワークフロー設計。稟議・申請の電子化や、業務アプリをノーコード/ローコード(プログラミングを最小限にして短期間でアプリを作る開発手法)で作る部分です

ライセンスは3種類あり、この3層をすべてカバーする「Business Platform」が最も広い構成、「Portal」はグループウェア中心、「Framework」はワークフロー・開発基盤中心です。今回の発表は、最も広い構成であるBusiness Platform全体に、AIエージェント「AquaAgent」を中核として組み込む、という話になります。

なお、WAPが提供する「HUE」シリーズ全体は、ERP(基幹業務システム)・AIエージェント・ビジネスプラットフォーム・データプラットフォーム・マネージドクラウドサービスという複数の製品群で構成されています。今回の主役であるHUE Ariel BPはこのうちビジネスプラットフォームに属する製品で、AquaAgentはその内部に組み込まれた機能という位置づけです。

AquaAgentとは何か — 「新登場」ではなく「中核化」

AquaAgentという名前自体は、今回が初出ではありません。公式の製品ページには本発表以前から、標準搭載のAIエージェントがユーザーの業務を支える機能として案内があり、単純作業の自動化・必要な情報への安全なアクセス・アプリ開発の3つを担うとされていました。

AquaAgentの位置づけの変化を示す比較図
第三者評価(ITreview・9/28時点)ではAquaAgentの生成AI機能は「検索補助」のみ。今回の発表は新機能追加ではなく既存機能を束ねて中核に据え直すもの

一方、第三者レビューサイトITreview(2026年9月28日時点の集計)の「生成AI機能一覧」には、AquaAgentという名称ではなく「検索補助(ChatGPT連携により情報検索や活用を高度化する基盤)」という機能が1件だけ掲載されています。カタログの更新タイミングによる差はあり得ますが、外部の第三者評価からは、これまでの生成AI活用が主に検索の高度化にとどまって見えていた、とは言えそうです。

今回の発表の新規性は、AquaAgentという機能そのものの追加ではありません。既存のローコード開発・高速全文検索・統合アクセス権限(ACL:情報ごとに「誰が見てよいか」を管理する仕組み)にAquaAgentを組み合わせ、基盤の「中核」として位置づけ直した点にあります。特定の業務基盤に深く組み込まれたAIエージェントという点で、汎用的なAIアシスタントを外付けする形とは性格が異なります(業界特化型と汎用型のAIエージェントの違いも参考になります)。

何が変わったか(Before→After)

公式発表はこの強化の狙いを、レガシーシステム・ERP・SaaSなどに分散しているデータと業務プロセスを、企業のガバナンスを保ったままAIが活用できる環境へ刷新することだと説明しており、具体的な強化点を3つに整理しています。

AquaAgent中核化によるBefore/After比較図
レガシー刷新・業務ナレッジ・アクセス権限の3点で、別々の投資→統合、個人の経験→蓄積、検索補助→権限連動へと変わる

1. レガシー刷新とAI活用を一体化 Before:レガシーシステムの刷新と、AI活用基盤の整備は別々に投資するケースが多い After:レガシーシステムをHUE Ariel BP上で再構築すると同時にAI活用の基盤も整い、刷新後にAI対応を追加で投資する重複を抑えられる

2. 業務を通じて企業固有のナレッジを蓄積 Before:過去の稟議・申請対応のノウハウは、個人の経験にとどまりやすい After:AquaAgentが申請・承認や文書管理の業務プロセスに組み込まれ、過去の稟議書・申請履歴から類似案件の対応を提示。人による修正・最終判断・例外対応の内容と結果を、次の案件で再利用できるナレッジとして蓄積する

3. 利用者ごとのアクセス権限をAIにも適用 Before:これまで外部から見えていた生成AI活用は、ChatGPT連携による検索補助が中心 After:統合アクセス権限(ACL)をAIの参照範囲にも反映。利用者が権限を持たない情報はAIの回答生成にも使われないよう制御し、高速全文検索と組み合わせて必要な情報への迅速なアクセスを支援する

背景には、WAPが2026年9月11〜13日に実施した調査(老朽化や限界を感じている回答者584名を対象に集計)があります。老朽化した既存システムの刷新・移行を難しくする要因では47.6%が「業務とデータの複雑性」を、生成AIの活用を業務につなげる際の課題では46.6%が「既存システム連携の困難さ」を挙げました。さらにAIを実務に組み込む際は、88.4%が「既存のアクセス権限と連動した参照範囲の制御」を、88.7%が「人による最終判断・修正履歴の保存」を重視すると回答しています。今回の強化は、この4つの懸念に応える設計だと読めます。

今後の展開としては、Notesなど個別開発された業務アプリのモダナイゼーション拡大に加え、Microsoft CopilotなどのAIアシスタントや各種生成AIサービスとの連携強化も挙げられています。ただし具体的な提供開始時期は「継続的な業務改善に生かせる環境を順次提供します」という表現にとどまります。

どんな企業・業務に関係するか

HUE Ariel BPは公式発表のリード文で「大手企業向け」と明記されている業務基盤です。関係が深いのは、次のような立場の人です。

この発表と関係が深い組織・薄い組織の比較図
HUE Ariel BPは大手企業向けの基盤で、複数部署・複数階層の承認ルートを持つ組織の情シス・DX推進部門と関係が深い
  • 基幹業務システムやワークフローを複数抱え、レガシー刷新を検討している情報システム部門
  • 生成AIの活用を「情報検索の高度化」で止めず、申請・承認プロセスにまで組み込みたいDX推進部門
  • Notes(レガシーな社内システムの一種)など個別開発された社内システムからの移行を検討している企業

逆に、個人開発者や数十人規模の小規模事業者にとっては、関係の薄い発表です。統合アクセス権限やワークフローの承認統制は、複数部署・複数階層の承認ルートを持つ大企業の業務構造を前提にした機能だからです。

導入を検討するなら、最初に確認すること

HUE Ariel BPは大手企業向けの業務基盤で、個人や小規模チームがまず無料で試す、という形の導入には向きません。

導入前に確認すべき3点を示すステップ図
料金・提供時期は非公開のため、まずレガシー対象範囲・権限の持ち込み・移行ツール対応の3点を確認してから問い合わせるのが近道

公式発表・製品ページを確認しても、具体的な料金体系と提供開始時期は明記されておらず、「順次提供」という表現にとどまっています。自社の要件に合うかどうかは、公式サイトの記載を確認したうえで、問い合わせ・資料請求から詳細を詰めるのが現実的な最初の一歩です。

具体的には、次の3点を確認すると絞り込みやすくなります。

  • 自社が抱えるレガシーシステムが、HUE Ariel BP上での再構築対象になるか
  • 既存のアクセス権限(誰が何を見られるかのルール)の設計が、AIの参照範囲制御にそのまま持ち込めるか
  • Notesなど個別開発システムからの移行が必要か(該当する場合は移行ツールの対象範囲も確認)

料金・提供時期は公式にも明記がないため、詳細は個別の問い合わせでしか分かりません。上の3点が自社に当てはまる大手企業の情報システム部門・DX推進部門であれば、公式サイトで対象範囲を確認し、問い合わせ・資料請求に進むのが現実的な最初の一歩です。

まとめ:WAPのAIエージェント戦略の一事例として

今回の発表は単発の機能追加ではなく、WAPが進めるAIエージェント戦略の一部として見ると位置づけが分かりやすくなります。WAPは本発表とは別に、2026年9月4日付でERP(基幹業務システム)「HUE Composable ERP」および「HUE Business Platform」をModel Context Protocol(MCP:AIエージェントが外部のシステムを安全に呼び出すための標準的な接続方式)に対応させたと発表しています(記事公開は同年9月7日)。対象は財務会計・購買調達などの機能全域とHUE Business Platform上に構築した独自アプリケーションで、AIエージェントが個別のAPI呼び出しに頼らず業務データ・業務プロセスを安全に利用・実行できる環境の整備が狙いとされています。

WAPの2つの発表がAIエージェント戦略に繋がる流れ図
ERPのMCP対応(9/4)とAriel BPのAquaAgent中核化(9/29)を合わせると、WAPは複数製品を横断してAIエージェント基盤を整備する方向にある

ERP側のMCP対応、業務基盤側のAquaAgent中核化という2つの発表を合わせると、WAPは「AIエージェントが企業のあらゆる業務システムに安全にアクセスし、実行まで担う」方向へ、複数の製品を横断して基盤を整えている流れが見えてきます。大手企業でのAIエージェント導入は他社でも進んでおり、三菱UFJ信託銀行が導入したLegalBrain Agentのような業務特化型のAIエージェントも登場しています。自社でAI活用を進めたいのがどのシステムか、を軸に情報を追っていくと理解しやすいでしょう。

もっと詳しく

ITreviewによる6項目評価スコアの一覧図
第三者評価では価格と導入のしやすさがやや低め、サポート品質と機能満足度が高めという傾向

第三者評価サイトでの評価

IT製品レビューサイトITreviewによると、HUE ArielAirOne Business Platformの総合満足度は3.8(レビュー投稿数49件、2026年9月28日時点の集計)。評価の内訳は、価格3.2/使いやすさ3.8/サポート品質4.0/導入のしやすさ3.3/機能への満足度4.0/管理のしやすさ3.6です。価格と導入のしやすさがやや低めで、サポート品質と機能への満足度が高めという傾向が見て取れます。同サイト上ではGrid Award 2026 Summerのグループウェア部門・ワークフローシステム部門・ローコード開発ツール部門、Grid Award 2026 Winterの開発支援ツール部門でLeaderの評価を受けています。

実際の導入企業(社内情報システム部門・従業員1,000人以上の企業、2026年9月19日投稿)からは、フルスクラッチのような自由度を保ちながらアプリケーションを開発できる点をローコード基盤の強みとして挙げたうえで、その自由度の高さゆえに生成AIを使った開発も可能になり、開発の効率性が大きく向上したという声がITreviewに寄せられています。これはAquaAgentの中核化より前の時点の評価で、既存の生成AI活用がすでに一定の効果を上げていたことを示しています。

ライセンス構成と関連ツール

業務アプリ開発を支援する別ツールとして「AquaDesigner」も提供されています。コーディング補助や、自然言語での指示から試作アプリを作る機能を担うツールで、AquaAgentとは役割が分かれています。

レガシー移行の観点では、Notes移行ツール「ArielAirOneTransfer for Notes」が別途用意されており、入力フォームやスクリプトの設計変換、移行データの自動変換をサポートします。今回の発表にある「レガシーシステムのモダナイゼーション対象拡大」は、こうした既存の移行支援とも連続した動きと見られます。

HUEシリーズ全体は2,500社以上での導入実績があると公式に案内されています。