Gemini 3.8 Liveに、声だけでなく表情のある映像で応答する「Live Avatar」が加わりました。画面の中の相手が、リップシンク(口の動きを音声に合わせること)をしながら話しかけてくるイメージです。ただし提供は企業向けの「Gemini Enterprise」限定で、個人の無料・有料Geminiプランでは使えません。本記事はGoogleの公式発表・公式ドキュメント・モデルカードの記載(2026年9月27日時点)をもとに、対象条件・料金の考え方・できること・注意点を整理したものです。

Gemini 3.8 Live Avatarとは|結論を先に

迷ったらこれ:Gemini Enterpriseを契約している組織の担当者なら、「カスタマーサービスか案内業務で、数分で終わる対話」に絞って検討するのが現実的です。 音声分だけなら10分の対話が約$0.115で済む計算なので(後述の試算)、映像分の単価を足して1通話の費用を見積もるところから始められます。個人でGeminiを使っている人は対象外なので、この記事は「自分は対象か」を判断するために読めば足ります。

Live Avatarの対象条件をまとめた図
対象・提供エンドポイント・向き不向きの3点で、自分が検討対象かを判断できる

Gemini 3.8 Live Avatar(正式名称:Gemini 3.8 Live with Live Avatar)は、音声対話モデル「Gemini 3.8 Live」にリアルタイムの映像アバターを組み合わせた機能です。Google DeepMindが2026年9月24日(米国時間)に発表し、同日からGemini Enterpriseで一般提供(GA)が始まりました。

判断に関わる点を先に並べます。

  • 対象:Gemini Enterpriseの契約組織。個人の無料・有料プランには追加されていない
  • 提供エンドポイント:公式ブログが明記しているのは米国とEU
  • 向く場面:公式が挙げる用途はカスタマーサービスとインタラクティブな案内(walkthroughs)の2つ
  • 向かない場面:数時間続く対話。モデルカードは「数分程度の連続対話」を想定している
  • 最初の5分でやること:社内でGemini Enterpriseの契約有無を聞く(手順は末尾)

Before → After|「声だけの相手」から「画面の中で話す相手」へ

個人向けのGemini Liveは、カメラ映像や画面を見せながら相談できますが、AI側の応答は音声のみです。映像のアバターは提供されていません。

入力映像と出力映像のフレームレートの違いを比べた図
入力の1フレームと出力の24フレームは別の話で、混同しなくてよい

Live Avatarでは、AI側の応答に表情と映像が加わり、対話相手として画面に表示されます。

ここで混同しやすい数字が2つあります。

向きフレームレート意味
Live APIの入力映像利用者のカメラ → AI最大で毎秒1フレーム(JPEG/PNG)AIに渡せる静止画の上限(公式ドキュメント)
アバターの出力映像AI → 利用者の画面報道では毎秒24フレーム(MP4)画面に映るアバターの滑らかさ

入力の1フレームは「AIが状況を見る頻度」の上限で、アバターの映像の滑らかさを表す数字ではありません。「毎秒1コマしか見ていない=アバターもカクつく」とは読まないでください。逆に、出力の24フレームも「AIが毎秒24回状況を認識している」という意味ではありません。

対象は誰か|Gemini Enterprise限定、個人プランでは使えない

Live Avatarは、企業向けAIエージェント基盤「Gemini Enterprise」で一般提供が始まった機能です。GeminiアプリのPro・Ultraなどに追加される発表ではありません。

利用者の状況別にLive Avatarとの関係を示した図
自分がどのパターンかで、Live Avatarとの関係が決まる
あなたの状況Live Avatarとの関係
組織でGemini Enterpriseを契約している今日から利用の対象。エンドポイント(米国・EU)と契約内容の確認から
Geminiの個人向け無料・有料プランを使っている対象外。音声での対話(Gemini Live)は引き続き使える
検討段階まず社内でGemini Enterpriseの契約有無を聞く

「Geminiアプリのアバター」とは別の機能です

Geminiアプリ(個人向け)にも「アバター」という名前の機能がありますが、これはLive Avatarとは別物です。個人向けのアバターは、Gemini Omniの動画生成やNano Bananaの画像生成で使う、静止画・動画向けの個人アバターです。公式ヘルプでは、Google AIプランへの加入が必要で、EEA・スイス・英国では提供されておらず、現時点では英語のみの対応とされています。「アバター」という言葉が同じでも、リアルタイムに会話するLive Avatarとは用途も対象者も違います。

できること|会話を止めない処理と97言語のリップシンク

Live Avatarの核は、「会話を続けながら、裏でツールやAPIを実行する」仕組み(非同期ツール呼び出し)です。たとえば、利用者と話している間に社内システムへ照会を投げ、結果が返ったら会話の流れの中で伝える、といった使い方です。「少々お待ちください」で会話が止まることを減らせます。

Live Avatarの用途と対応言語をまとめた図
公式が挙げる用途は2つで、会話を止めない処理と97言語対応が核

開発者向けドキュメントによると、ツール呼び出しはNON_BLOCKING(会話を止めずに実行)が既定です。後方互換のためBLOCKING(結果が返るまで待つ)も選べます。結果をいつ会話に差し込むかは、INTERRUPT(すぐ割り込む)・WHEN_IDLE(会話の切れ目で)・SILENT(話さず内部で使う)の3種から選びます。

取り消しの仕組みと、設計で気をつける点

BLOCKING呼び出しの最中に利用者が新しく話し始めると、Live APIのサーバーが保留中の呼び出しを自動でキャンセルし、キャンセルされたIDを知らせます。注意したいのは、取り消されるのはLive API側の「保留中の呼び出し」だという点です。呼び出された先の業務システムで処理がすでに走っている場合、それが止まるかどうかは別の話です。予約や発注のような処理をつなぐなら、同じ依頼が2回届いても結果が変わらない作り(冪等性)にしておくのが安全です。これは設計上の注意として書いています。

97言語、会話中の言語切り替えにも対応

対応言語は日本語を含む97言語で、言語は自動で検出されます。会話の途中で言語が切り替わっても、リップシンクと表情の品質を保つとGoogleは説明しています。

公式が挙げる用途は2つだけ

公式発表が想定用途として挙げているのは、カスタマーサービスとインタラクティブな案内の2点です。面接練習や研修のロールプレイといった使い方を紹介する記事も見かけますが、発表ページにはそうした記載がありません。導入を考えるなら、まず自社の問い合わせ対応や案内業務のどこに当てはめられるかで考えるのが筋です。

料金の仕組み|音声分の単価と、映像分の考え方

Gemini 3.8 Live(音声版)のAPI料金は、100万トークン当たりで次のとおりです(標準ティア、Gemini API公式料金表・2026年9月27日時点)。

項目100万トークン当たり分換算の目安
テキスト入力$0.75-
画像・動画入力$1.00約$0.002/分
音声入力$3.00約$0.005/分
テキスト出力$4.50-
音声出力$12.00約$0.018/分

完全な従量課金で、モダリティ(テキスト・画像・音声など)ごとに単価が分かれています。Live Avatarでは、これに加えてアバター映像の分が別に課金されます。GA発表のGoogle Cloudブログ本文に映像分の金額は載っておらず、「料金ページを見てください」という案内です。

Live Avatarの音声部分の詳細については、Gemini 3.8 TTSの使い方ガイドをご覧ください。

アバター映像の課金の考え方

複数の報道は、アバター映像を「1秒当たり6,192トークン」として数え、単価を100万トークン当たり$1.00、課金されるのは「アバターが話している間だけ」(利用者の発話を聞いている待機中は課金なし)と伝えています。この数字は公式ブログ本文には出ていないため、見積もりに使うときはGoogle Cloudの料金ページの単価で必ず置き換えてください。

10分の対話を試算する(AI 5分・利用者 5分)

  • 音声出力:5分 × 約$0.018 = 約$0.09
  • 音声入力:5分 × 約$0.005 = 約$0.025
  • 音声分の合計:約$0.115
  • アバター映像(報道の数字で仮計算):5分=300秒 × 6,192トークン = 約186万トークン × $1.00/100万 = 約$1.86

報道の数字が料金ページと一致していれば、10分の対話は合計約$2前後、費用の大半が映像分という見立てになります。音声だけの感覚で予算を組むと外れます。

上限:出力トークンと対話の長さ

Gemini 3.8 Audioのモデルカードによると、通常は「音声・テキスト、出力64Kトークン」ですが、Live Avatar利用時は「音声・映像・テキスト、出力24Kトークン」になり、上限が下がります。さらに、連続対話は「数分程度を想定しており、数時間規模ではない」と書かれています。長時間の窓口担当や研修講師の代わりとして、1回の対話を数時間つなぎっぱなしにする使い方は、想定の外です。

導入事例に見る用途の幅

Googleの公式ブログが挙げている導入企業は3社です。

導入企業3社の用途を並べた図
3社とも、カスタマー向けの対話窓口という公式の用途に沿っている
  • Cox Automotive(Autotrader):車両検索のためのAIショッピングアシスタント
  • Equal AI:インドの9言語で、1日100万件超のライブ通話を処理
  • Salesforce:Agentforceとの連携。両社のチームが共同で開発

3社とも、カスタマー向けの対話窓口という公式の用途に沿った事例です。

アバターの種類と企業の責任

アバターは、用意された既製アバターから選ぶ方法と、参照画像1枚から独自のアバターを作るカスタムアバターの2通りです。カスタムアバターの作成は現時点で、Googleの事前承認(エンタープライズ向けの個別登録)を受けた企業だけが使えます。必要な場合はGoogle Cloudの担当窓口に相談します。

既製アバターとカスタムアバターの違いを比べた図
カスタムアバターは事前承認が前提で、同意の確保は企業の責任になる

カスタムアバターの運用ガイドでは、顔や声の素材を使うための同意・権利の確保は、導入する企業側の責任と明記されています。未成年者、著名人、不快な画像は使えません。参照画像はPNG推奨、RGB、704×1280ピクセル以上の縦長(9:16が標準)、720p以上が目安です。

SynthIDは「後から確認できる」仕組みです

Live Avatarが生成する音声と映像には、人には感じ取れない電子透かし「SynthID」がすべて埋め込まれます。

映像・画像はトリミング、フィルター追加、フレームレート変更、圧縮に、音声はノイズ追加、MP3圧縮、速度変更に耐えるよう設計されています。検出は、ファイルをGeminiにアップロードして尋ねるか、検証ポータル「SynthID Detector」にアップロードして行います。つまり透かしは「ファイルを後から調べる」ためのもので、対話の画面上にAIだと自動で表示される仕組みではありません。利用者にAIだと伝える表示は、導入企業が自分で用意することになります。

モデルカードが挙げる制約

モデルカードには、既知の制約として「幻覚(事実と違うことを自信ありげに話すこと)」と「ときどき遅くなる、またはタイムアウトが起きる問題」が明記されています。窓口で使う場合は、料金や契約条件のような重要な案内をAIの発話だけに任せない設計が要ります。

Extended Thinkingは別の段階

推論を強化した「Gemini 3.8 Live Extended Thinking」は、現時点で非公開プレビューです。Live Avatar本体と提供状況が異なるので、混同しないようにしてください。

今日確認できること|自分が対象かどうかを確かめる手順

Live Avatarは個人が今日から触れる機能ではないので、最初の一歩は「自分の組織が対象か」の確認です。

自分がLive Avatarの対象かを確認する5ステップ
個人が今日できるのは、映像アバターを試すことではなく対象かどうかの確認
  1. 社内のGoogle Cloud管理担当・情シスに、Gemini Enterpriseを契約しているか聞く(対象は契約組織のみ)
  2. 契約している場合は、使うエンドポイントが米国・EUのどちらかを聞く
  3. 料金ページでアバター映像の単価を見て、上の音声分の試算に上乗せして1通話の費用を出す
  4. 既製アバターで足りるか、カスタムアバターが要るかを決める。必要なら担当窓口に相談する
  5. 個人で音声対話だけ試したいなら、通常のGemini Live(音声のみ)が個人プランで使える。無料から始める手順はGoogle AI Studioの使い方にまとめています。ただし、これはLive Avatarの対象外です

公式の説明では、Live Avatarは数分の対話を想定した、カスタマーサービスや案内向けの機能です。音声分の試算で出した「10分で約$0.115」に映像分が乗る、という見方で、まず契約プランを見て1通話あたりの金額を自社の見積もりに置き換えてみてください。