Google は 2026年9月30日(日本語ブログは10月1日付)に、新しいフロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を発表しました。つまり、AI が一度の作業で書き出せる量が大きく増え、調査→修正→テスト→再修正のような長い仕事を途切れず続けやすくなったモデルです。ソフトウェア開発、法務・財務などの専門業務、サイバー防御に関わる人に特に関係します。

ただし、今日すぐ使えるわけではありません。現時点の提供先は、審査を受けたサイバー防御の担当者向けの「Fairwind Program」です。有料 API の利用者と Google AI Ultra の加入者への提供は「その後」とされ、一般提供日は公式に書かれていません。

迷ったらこれ: 個人開発者・業務で AI を使う人は、今は乗り換えず、Gemini API のモデル一覧に Argon が載るのを待つのが無難です。理由は、2026年10月3日時点で API のモデル一覧と料金ページに Argon の記載がなく、モデル ID も未発表のため、試す入口がまだないからです。最初の 5 分でやることは、公式の発表ページをブックマークし、今使っているモデルで「出力が途中で切れて困っている作業」を 1 つ書き出すことです。Gemini 3.1 Pro の出力上限は 65,536 トークンで、Argon で変わる可能性があるのはまさにその種の作業です。

なお本記事は公式発表と公式ドキュメントの記載に基づく整理で、Argon 自体を使った検証は行っていません。他社モデルとのベンチマーク比較は公式発表の比較表で確認できます。本記事では他社の数値を載せていません。

Gemini 4 Argon とは

発表時の位置づけは、「実世界のソフトウェアエンジニアリング、法務・財務などの企業ナレッジワーク、サイバー防御の複雑なワークフローで最先端性能を出すフロンティアモデル」です。

Gemini 4 Argon の位置づけと名前まわりの整理
Argon は発表時の位置づけと、名前まわりの未説明点を分けて読めます。

名前まわりで気になりやすい点を先に整理します。

  • 読み方: 公式に読み方の記載はありません。Argon は一般には原子番号 18 の元素名(アルゴン)です
  • 「Pro」との関係: Google は「Argon」の由来も、従来の「Pro」との関係も説明していません。報道では、5 月発表の Gemini 3.5 Pro が一般提供に至らず、その後は 3.6 以降の Flash 系が公開されてきたと伝えられています
  • 「Gemini 4 Pro」: 今回の発表名は「Gemini 4 Argon」です。公式が「Gemini 4 Pro」という別モデルを示したわけではありません

Gemini 3.1 Pro から何が変わったか

最大の変更点は最大出力トークンが 64K から 100 万に拡大したことです。公式は「1 つの軌跡の中で数十万トークンを生成でき、難問を一気に解く深い推論のため」と説明しています。

3.1 Pro Preview と Argon の最大出力などの比較
最大出力の差が最大の変更点で、入力側の上限の話ではありません。

注意したいのは、これが入力側のコンテキスト長(一度に読み込める量)の話ではない点です。Argon の入力上限は、公式発表では触れられていません。「100 万」は AI が一度に書き出せる量の上限で、毎回そこまで出力するわけではありません。

項目Gemini 3.1 Pro PreviewGemini 4 Argon
モデル IDgemini-3.1-pro-preview未発表
入力上限1,048,576 トークン公式発表では触れられていません
最大出力65,536 トークン100 万トークン(約 15.6 倍)
提供状況API で Preview 提供中(無料枠なし)Fairwind Program で限定提供から順次
API 料金(100 万トークンあたり)入力 $2〜$4/出力 $12〜$18(プロンプト長で変動)導入価格 入力 $2/出力 $10

「約 15.6 倍」は 1,000,000 ÷ 65,536 の計算値で、公式の表記は「64K から 1M」です。得意分野の対比は、公式が同じ軸で書いていないため表にしていません。

Before → After で言い換えると、長い作業を何度かに分けて出力させていた場面で、1 回の推論の中で調査・コード変更・テスト・再修正を続けられる余地が増える、というのが公式説明の趣旨です。

性能の読み方

公式発表が挙げる主な成績は次のとおりです。

Argon の公式ベンチマーク結果の抜粋
数字は課題ごとの結果なので、自分の仕事に近い課題かで意味が変わります。
ベンチマーク公式の記載
DeepSWE v1.1(実際のソフトウェア修正課題)77.9%。公式は「new state of the art(新記録)」と表現
Zapier AutomationBench(業務自動化)51.3%で 1 位
LVBench(長尺動画の理解)91.7%で state of the art
CWE-bench v1(脆弱性関連)68%で首位タイ
Vals Index・Vals Finance Agent v2・Harvey’s Legal Agent Benchmark先頭または同様にリード。公式本文に数値はなく、数値は比較表(画像)に載っています
Gray Swan IPI(間接プロンプトインジェクション耐性)トップ。公式本文に数値はなく、数値は比較表(画像)に載っています

公式の本文には数値がない指標でも、比較表(画像)には数値が載っています。他社モデルとの数値の並びは、公式発表の比較表で直接確認してください。他社との数値比較は、同じ条件で測った値かどうかを本記事では確かめられていないため、ここでは Argon 自身の公式の記載に絞っています。

読むときのポイントは 2 つです。

  1. ベンチマークは「測った課題」での結果です。自分の仕事に近い課題かどうかで意味が変わります。「開発に強い」と一言でまとめず、課題の種類を見てください
  2. 課題が違えば順位は変わりえます。同じ「ソフトウェア開発」でも、課題の作りや採点方法が違えば他社モデルとの差は変わります。公式の比較表で、自分の仕事に近い課題の行を見るのが確実です

Google 社内の活用事例と業務での使い所

公式が挙げる社内事例は、Argon の得意な仕事のイメージをつかむ材料になります。

Google 社内の Argon 活用事例の要点
社内事例から、Argon が長い開発作業向きだと読み取れます。
  • コード移行: C/C++ から Rust への移行を、re2・libgav1 の数万行から Fuchsia の Zircon kernel の 80 万行超まで実施。本番前に自動・手動の監査とレビューを行っている段階です
  • 性能改善: libgav1 の 32K 行の SIMD コードを置き換え、既存の Rust 移植版より 2.7 倍高速で、出力は同一。数千人の Google 社員が社内で利用しています
  • メモリ削減: データセンターのメモリ 300TiB 以上を解放(展開後)。合計で 500TiB〜1PiB の節約を見込みます
  • 量子アルゴリズムの最適化: 数分で公表基準値を 40% 上回りました
  • 脆弱性の発見: Wiz が Scan for Good 経由で Argon を使い、世界中の病院が使う医療ソフトで、個人情報を露出させる重大な脆弱性を発見しました

業務に置き換えると、次のような場面が想定されます。

  • 開発者: 大規模なコード移行や既存コードの高速化など、調べて直してテストする長い作業
  • 法務・財務の担当者: 公式は法務・財務のベンチマーク(Harvey の法務エージェント評価、Vals Finance Agent)でのリードを挙げています。公式本文には数値がなく、数値は公式の比較表(画像)に載っています

社内事例は Google の環境での結果で、自分の環境での成果を保証するものではありません。

いつから・誰が使えるか

公式が示す提供段階は次の 3 段階です。

Argon の提供 3 段階の流れ
今使えるのは Fairwind Program の対象だけで、一般向けの時期は未発表です。
段階対象時期
① 現在Fairwind Program(信頼できるサイバー防御担当者)順次提供中
② その後有料 API の利用者、Google AI Ultra の加入者現時点で公式の発表はありません
③ そのうえで開発者・企業・一般消費者現時点で公式の発表はありません

Fairwind Program の対象は、政府・国のサイバー当局、重要インフラ事業者、中核技術プラットフォームを防御目的で研究する学術機関などです。利用は申請制で、申請者の所属や目的が審査されます。一般の開発者は対象外です。

無料で使えるかについて、公式は無料での提供に言及していません。段階はいずれも「有料 API」「Google AI Ultra」「その後に一般」の順です。Gemini API の料金ページでは、Gemini 3.1 Pro Preview の無料枠は「Not available」です。2026年10月3日時点で、公式のモデル一覧と料金ページに Argon の記載はありません。したがって、無料で試せるかは今のところ公式の情報からは判断できません。

Fairwind の参加者と Google 社内チームには、サイバー面のガードレール(悪用を防ぐ制限)を外した状態で Argon が提供されます。

一般公開より先に段階提供とする理由について、公式は「この水準の能力を安全に公開するには段階的アプローチが必要」と説明しています。米政府の自主的な事前アクセスのプロセスにも参加しているとのことです。

料金

API の料金(100 万トークンあたり)は次のとおりです。

導入価格と導入期間後の API 料金の比較
導入価格と報道の導入期間後の価格を並べて読めます。
区分入力出力
導入価格(公式発表)$2$10
導入期間後(ITmedia の報道)$4$20
  • キャッシュ済み入力(同じ内容を再送するときの入力)は入力価格の 95% オフです(公式発表)
  • 導入期間の終了日は、公式発表にも報道にも記載がありません。導入期間後の $4/$20 は報道に基づく数字で、公式発表には記載がありません
  • Gemini アプリの月額プランとは別の、API の従量課金の話です

換算例(入力 100 万+出力 10 万トークン):

  • 導入価格: $2 + 0.1 × $10 = $3
  • 導入期間後: $4 + 0.1 × $20 = $6

出力上限が 100 万トークンでも、毎回そこまで出すわけではありません。実際の費用は、自分の作業の入出力量で決まります。他社モデルとの価格比較は、各社の公式料金ページで同じ単位(100 万トークンあたり)にそろえて見るのが確実です。

安全対策と、向いている人・待つ人

公式が説明する安全対策は 4 領域です。

Argon の安全対策 4 領域
安全対策は 4 領域に分かれ、本番投入前の社内確認は別に必要です。
  1. 悪用防御: 内部活性化の監視を改良し、社内外のレッドチーム(攻撃役を立てた検証)で検証
  2. プロンプトインジェクション耐性: 自動レッドチームと敵対的訓練
  3. ミスアライメント監視: 思考過程と行動を監視し、必要なら実行を停止
  4. システム硬化: 高リスクの訓練前にサンドボックス(隔離環境)を隔離・密閉

安全対策があっても、AI が出したコードや文書を本番に入れる前の社内確認は必要です。

今やること/待つこと:

  • 個人開発者: Argon は待ち。今は Gemini API の公式モデル一覧を確認し、Argon が載ったら、出力の長さが効く作業(大きなコード移行・長い修正の連続)で試します。今の環境を整えるなら Google AI Studio の使い方と API キー発行手順 が入口になります
  • 非エンジニアの業務担当: 今は使えているモデルをそのまま使って問題ありません。出力上限が効くのは長いコード生成などが中心で、日常の文書作成では差を感じにくい可能性があります(公式に明記はなく、筆者の見立てです)
  • サイバー防御の担当者: 自分の組織が Fairwind Program の対象に当てはまるか、公式ページで確認する価値があります

次の一歩

今日やることは 1 つです。今使っている Gemini 3 系のモデルで「出力が途中で切れて困った作業」を 1 つ書き出し、公式の発表ページをブックマークすること。Argon が刺さるのは、大きなコード移行や、調査→修正→テスト→再修正を 1 回で通したい長い開発タスクのような場面です。書き出した作業を、Argon が API に載ったときに同じ条件で比べれば、完成度・修正回数・確認にかかった時間で、乗り換えるかを自分で決められます。

今日やることと比べる軸のまとめ
書き出した作業が、Argon が API に載ったときの比較の基準になります。

下のリンク先の料金ページに今載っているのは Gemini 3 系の料金で、Argon の料金は載っていません。Argon が載ったら、同じページで確認できます。

APIで使う予定の人へ。いま載っているのは Gemini 3 系の料金です。

Gemini API の公式料金ページを見る(Argon が載ったらここで確認)

もっと詳しく

本記事の内容は 2026年10月3日時点の公式情報です。提供時期・価格は変わる可能性があります。