入社のたびにアカウントを作り、退職のたびに消す。API連携(システム同士が自動でやり取りする窓口)のないWebサービスでは、その作業を管理画面で手作業している担当者は少なくないはずです。
SmartHRは2026年10月1日、ID管理の「ブラウザ自動操作」(ブラウザ上の決まった操作を自動で繰り返す連携方式)を拡張しました(プレスリリースの発表は10月2日)。つまり、API非対応のWebサービスでも、アカウントの作成・削除をSmartHRの画面から実行できるようになりました。 これまでは「誰を作る・消すべきか」が分かるところまでで、実際の作成・削除は手作業でした。
なお本記事は、SmartHRの契約・利用を踏まえた記録ではなく、公式の公開情報(2026年10月3日時点)に基づいています。
迷ったらこれ:まず「API連携あり/なし」の棚卸しから
API非対応のSaaSを複数使い、入退社が定期的にある会社の情シス・総務・人事担当は、SmartHRのID管理(情報システムプラン)から確認するのがおすすめです。 公式が公開した先行導入事例(株式会社かぶらやグループ)では、アカウント作成が約2〜3分から約1分に、削除が約60秒から約10秒に短縮されています(削除は約83%の削減)。これは1社の事例の数字であり、自社で同じ結果になる保証はありません。

向かないのは、利用サービスがほとんどAPI連携済みで、手作業がほぼ残っていない会社です。この場合、今回の拡張が効く場面はそもそも少なくなります。
最初の5分でやることは1つ。自社で使っているサービスを「API連携あり」と「なし」に分けて書き出してください。「なし」の数が、今回の拡張で効く範囲の目安になります。
何が変わったのか:5月の「見える化」から10月の「実行」へ
ブラウザ自動操作は、今回が初出ではありません。5月に「取得・可視化」として始まり、10月に「作成・削除」が加わりました。

| 項目 | 5月(2026年5月11日提供開始) | 10月(2026年10月1日提供開始) |
|---|---|---|
| できること | API非対応サービスのアカウント情報を取得し、SmartHRの従業員データと照合して可視化 | 取得に加え、アカウントの作成・削除をSmartHRから実行 |
| 作成・削除 | API連携が必要。API非対応サービスの作成・削除は「今後視野に入れ検討」とされていた | 手順を一度記録すれば、以降はSmartHRから自動実行 |
| 実行場所 | 取得結果の表示(要作成・要削除の可視化) | 「従業員のアカウント管理」の「要作成」「要削除」タブの「操作」 |
| 公式の事例の数字 | 取得作業が1サービスあたり最大10分程度から最短1分、最大90%の効率化 | 作成が約2〜3分から約1分、削除が約60秒から約10秒 |
ここで注意したいのは、5月と10月の数字は別の作業の話だという点です。5月の「最大90%」は取得作業の削減で、作成・削除の効果ではありません。10月の数字が、作成・削除そのものの事例です。
自動化のうち、AIが関わる範囲
「画面の操作を全部判断して代行する仕組み」と受け取られがちですが、公式の記載に沿って整理すると少し違います。
- 5月の取得機能:アカウント一覧画面の構造(HTML)をAIが解析し、取得する項目を自動で特定・提案します。管理者は提案を確認するだけで初期設定を進められます。
- 10月の作成・削除:管理者が作成・削除の手順を一度記録し、2回目以降は記録した手順に沿ってSmartHRが管理者に代わって実行します。プレスリリースの表現では、記録された手順を実行する部分にAIが関わる、という位置づけです。
作成・削除の画面をその場で判断しながら進める、とまでは公式に書かれていません。「人が一度見せた手順を、あとは自動で繰り返す」と捉えておくと、実態からずれません。
入退社の場面で、誰が何をするのか
公式のお知らせ・ヘルプの記載から、運用の流れを場面ごとに整理します。

最初に一度だけ:手順の記録(管理者) 公式ヘルプによると、前提はID管理の設定で連携方式を「ブラウザ自動操作」にすることと、ブラウザ拡張機能の導入です。導入後は、動作設定の項目として作成用と削除用の2つが加わり、それぞれ次の内容を設定します。
- 作成:アカウント作成画面の手順の記録 → 入力項目の設定 → 完了の手順の記録 → 動作テスト
- 削除:アカウント一覧の表示 → 検索 → 削除の手順の記録 → 動作テスト
入社前の準備(担当者) 「従業員のアカウント管理」の「要作成」タブに、アカウントが必要な従業員が表示されます。「操作」から作成を実行します。作成時には、氏名・メールアドレス・社員番号などSmartHRの従業員情報が入力され、初期パスワードは自動生成されます。
退職日の締め作業(担当者) 「要削除」タブに、削除すべきアカウントが表示されます。「操作」から削除を実行します。退職者のアカウントが残り続ける消し忘れを、一覧で見つけやすくするのが狙いです。
公式の事例では、この「操作」からの作成が約1分、削除が約10秒です。手作業で複数のサービスを回っている担当者ほど、差が出る部分です。
人の確認として残るところ・使う前に確認したいこと
「自動」といっても、すべてが手離れするわけではありません。公式の記載から読み取れる範囲では、次の点が残ります。

- 実行は「操作」ボタンから:記載された運用では、タブに表示された従業員を担当者が確認し、「操作」から実行します。
- 最初の記録と動作テスト:サービスごとに、作成・削除の手順を記録し、動作テストを行う必要があります。
- 対応していないサービスがある:公式には「一部本機能に対応していない外部サービスがあります」との注記があります。対応条件の詳細は公式の公開情報に記載がないため、自社の主要サービスが使えるかは導入前に確認する項目です。
- 外部サービス側のルール:自動取得の可否など、対象サービスの利用ルールの事前確認は利用者の側に求められています。
- 料金:ブラウザ自動操作は、ヘルプの記載では「有料オプション」です。ID管理は「情報システムプラン」で利用でき、人事労務機能を含まず情報システム部門のアカウント管理業務に特化したプランです。金額やオプションの追加費用は、申し込み前に公式の料金ページで確認してください。
- 初期パスワードの扱い:自動生成されることは分かっていますが、本人への受け渡し方法は公式の公開情報に記載がありません。運用ルールは導入時に詰める必要があります。
向いている会社・向かない会社
判断の軸は、手作業で作成・削除しているサービスがどれだけあるかです。

| 向いている | 向かない | |
|---|---|---|
| API連携していないSaaS | 複数ある | ほぼない |
| 入退社の頻度 | 毎月ある | ほとんどない |
| 運用の悩み | 作成漏れ・消し忘れが不安 | 手作業の負担が小さい |
人事労務の機能も含めて使いたい会社は、ID管理が「情報システムプラン」の機能である点に注意が必要です。このプランは人事労務機能を含みません。
SmartHRの自動化に対応していないサービスが複数ある場合は、DifyなどのオープンソースツールをVPSでセルフホストして費用対効果を比較する方法も並行で検討する価値があります。
今日できる最初の一歩
今日やることは1つだけ:自社で使っているサービスを「API連携あり/なし」に分けて書き出す(10分程度)。 「なし」のうち、入退社のたびに手作業しているものに印を付けてください。

印を付けたサービスが3つ以上あるなら、公式の事例(作成が約2〜3分から約1分、削除が約60秒から約10秒)が自社の目安になるか、月間の入退社人数と掛け合わせて見当を付けられます。数が少なければ、無理に導入する必要はありません。
公式の事例どおりなら、作成と削除の手作業は1件あたり数分から数十秒まで縮みます。棚卸しで「効く範囲」が見えたら、次はSmartHRのID管理の対象プランと料金条件を公式ページで見比べるのが、いちばん無駄のない進め方です。
入退社のたびにWebサービスのアカウントを手作業で作る・消す担当者には、操作を一度記録して自動実行できるこの機能が合います
SmartHR(ID管理) の料金プランを確認する(公式)もっと詳しく:公式の出典と数字の読み方
出典(2026年10月3日時点)

- SmartHR プレスリリース(2026年10月2日発表): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000462.000015987.html
- SmartHR サポート お知らせ(2026年10月1日リリース): https://support.smarthr.jp/ko/info/update/hokroe3fs9/
- SmartHR ID管理 機能ページ: https://smarthr.jp/it-solutions/function/id-management/
- SmartHR プレスリリース(2026年5月13日発表): https://smarthr.jp/release/20260513/
日付の読み方:サポートのお知らせは10月1日のリリース、プレスリリースは10月2日の発表です。提供開始は10月1日と覚えておけば問題ありません。
数字の読み方:作成・削除の数字(作成 約2〜3分→約1分、削除 約60秒→約10秒)は、かぶらやグループの先行導入事例です。サービスの画面構成や入力項目の数で、所要時間は変わります。5月の「最大90%」は取得作業の数字で、作成・削除には当てはまりません。
5月の機能の補足:ブラウザでアカウント一覧画面を表示できるWebサービスなら、SaaS・オンプレミス・自社開発を問わず取得の対象になります。一部データの取得が困難なケースや、対応できない外部サービスがある旨の注記が公式にあります。取得したアカウント情報はSmartHRの従業員データと自動で照合され、作成・削除が必要なアカウントが見える化されます。
ヘルプの詳細:手順の細かな条件や、作成・削除が失敗したときの表示は、ログイン後のヘルプで読める範囲です。

