米国の大手スーパーマーケットチェーン Albertsons Companies が、ChatGPT Enterprise と OpenAI の API を社内業務に組み込んでいることを、OpenAI が公式に発表しました(2026年10月1日公開)。対象は店舗運営や需要予測、商品の仕入れ提案、社内のナレッジ検索、ChatGPT上での買い物体験づくりなど幅広い業務です。ChatGPTやAPIで自社の業務を自動化したい担当者、個人開発者、中小事業者に関係がある発表です。Enterprise自体は数千人規模の企業向けの個別契約ですが、同じ発想は既存のChatGPTプランやAPIでも小さく再現できます。今日できる最初の一歩は、手元のChatGPTプラン(Free〜Business)でカスタムGPTを1つ作ってみることです。この記事はOpenAIの公式発表やプレスリリースなどの一次情報に基づいており、ChatGPT EnterpriseやAPIを実際に操作した検証は行っていません。

Albertsonsで何が起きたのか

Albertsons Companiesは、Albertsons・Safeway・Vons・Jewel-Osco・Shaw’s・ACME・Tom Thumbの7ブランドで2,200店舗以上を展開し、週3,600万人以上の顧客に食品や日用品を販売している米国の大手スーパーマーケットチェーンです(2026年10月1日のOpenAI公式発表時点)。

Albertsonsがチャットと APIを組み込んだ5つの業務領域の一覧図
Albertsonsが生成AIを使う対象は、買い物から店舗運営、仕入れ、顧客対応まで5つの業務領域に及びます。

同社はChatGPT EnterpriseとOpenAIのAPI(他のシステムやアプリからAIの機能を呼び出すための仕組み)を、デジタルでの買い物、店舗運営、商品の仕入れから配送までの流れ、商品の仕入れ計画(マーチャンダイジング)、カスタマー対応システムの構築・テスト・改善という幅広い業務に組み込んでいます。

目立つ新機能が「Safeway experience in ChatGPT」です。レシピや料理の写真、買い物リスト、「4人分のピザナイトを計画して」といった簡単な要望をChatGPTに伝えると、関連する商品や割引をChatGPTが提示し、カートを作るところまで手伝ってくれます。最後はSafewayでの決済に進む設計です。この機能は今後、Albertsons・Vons・Jewel-Osco・Shaw’s・ACME・Tom Thumbの各ブランドにも広げる予定だと発表されています。

Albertsons CompaniesでDigital Customer Experienceを統括するJill Pavlovich氏は、「買い物の手間を減らし、日々の買い物をもっと簡単にするための、実用的な取り組みの一つだ」とコメントしています。

何が変わったのか

公式の発表には、作業時間や人数、コストといった定量的な数値の記載が一切ありません。これは本記事を書くうえでの前提です。何が変わったのかは、業務の内容から読み取る必要があります。

買い物体験のこれまでと今の比較図
変化点は、検索とカート入れを自分で行う形から、話しかけるだけでAIが一括する形になったことです。

これまでの買い物支援は、レシピサイトや買い物リストアプリを別々に使い、商品を自分で検索してカートに入れる作業が中心でした。Safeway experience in ChatGPTでは、話しかけるだけで関連商品の提示からカート作成までをAIが一括して行う点が変化点です。

社内の意思決定の面でも、過去データから将来の需要などを予測する仕組み(予測モデル)だけに頼った判断から、生成AIを組み合わせて「なぜその商品を推すべきか」を説明できる形でマーチャンダイザー(商品の仕入れや陳列を決める担当者)に提示する仕組みに変わったとされています。

なお、この発表と同時期に、Albertsonsが2026年2月からOpenAIの広告表示テストに参加しており、そちらでは「バスケットサイズが二桁成長した」という発言が別途報じられています。これは今回の業務効率化の発表とは別の取り組みで、数値も広告テストの文脈のものなので、混同しないよう注意してください。

ChatGPT Enterpriseとは何か

ChatGPT Enterpriseは、大企業向けに用意されたChatGPTの最上位プランです。2023年8月の発表時点で、入力したデータがAIの学習に使われないこと、SOC 2(第三者機関によるセキュリティ認証)準拠、保存データの暗号化、管理者がメンバーを一括管理できる管理コンソール、SSO(シングルサインオン)対応などが特徴として挙げられていました。

ChatGPT EnterpriseとBusiness/Teamの契約形態の比較
Enterpriseは個別見積もり、Business/Teamは1人あたり月額の定額制という契約形態の違いが分かります。

現在の公式ページでは、これに加えて「Compliance API」という、社内の会話やAIエージェントの利用状況をまとめて確認・監査できる機能が紹介されています。管理者はワークスペース全体で、どのエージェントやツールが使われているかを管理できます。世界で500万人以上のビジネスユーザーが利用しているとも記載されています。

料金は公開されておらず、公式サイトでも「営業にお問い合わせください」という案内のみです。つまり、利用人数や用途に応じた個別見積もりという契約形態です。これに対して、ChatGPT BusinessやTeamは1人あたり月額の定額制プランです。複数の報道では、Businessの料金は$20〜25/ユーザー/月程度(年契約か月契約かによって変動)と報じられています(2026年10月時点、OpenAI公式ページでの金額表示は本記事では確認できていません)。具体的な金額は変更されることがあるため、申し込み前に公式サイトの料金ページで最新の金額を確認してください。

エンジニア向けの機能としては、コーディングを支援する「Codex」がEnterprise向けの管理機能付きで提供されており、エンジニアリングだけでなくマーケティングや財務、営業など部門別の活用例も公式に紹介されています。導入支援や24時間365日のサポートも用意されています。

なお、「GPT-5搭載でマルチモーダル対応やモデルの自動切り替えが強化された」「Microsoft の Copilot や Office 製品との連携が強化された」という情報を見かけることがありますが、本記事が確認した公式ページの本文にはこの記載が見当たりませんでした。確認できたのはCodexとの統合のみです。

個人や中小企業ならどう使うか

Albertsonsの構成(ChatGPT Enterprise+API)を個人開発者や中小企業がそのまま再現することはできませんが、考え方は小さい規模でも応用できます。

個人や中小企業向けの2つの使い方と課金の整理
個人や小規模チームは、カスタムGPTとAPIの2つの入り口から小さく始められます。

社内向けのやりとりをAIにまとめて答えてもらう部分は、手元のChatGPTプラン(Free〜Business)でカスタムGPTを作る、または既存のFAQやマニュアルを読み込ませて質問に答えさせる形で、個人や小規模チームでも似た体験を作れます。

既存の業務システムに組み込みたい場合は、OpenAIのAPIを使う方法があります。APIは公開ドキュメントを読めば誰でも利用できますが、無料枠ではなく使った分だけ課金される従量課金制です。業種によっては専用の提供形態が用意されていることもあり、たとえば金融業界向けの提供状況はこちらの記事でも確認できます。本記事では実際にAPIを呼び出す検証は行っていないため、料金体系は公式ドキュメントの記載に基づく情報として読んでください。

国内企業の事例と比べると

ChatGPT Enterpriseの導入は海外の大手だけではありません。国内でも大手企業の事例が公式やプレスリリースで発表されています。主な事例を並べると、公表時期や定量成果の有無に違いが見えてきます。

Albertsons・楽天・NEC・ダイキン・三菱UFJ銀行の事例比較表
定量成果を公式に示しているのは楽天とNECで、Albertsonsは数値の記載がない点が違いです。
企業公表時期対象規模中心ツール定量成果(公式発表)
Albertsons(米)2026年10月2,200店舗超・週3,600万人の顧客ChatGPT Enterprise + API数値の記載なし
楽天グループ2025年2月AI利用者30,000人超・毎日利用8,000人超Rakuten AI(※Enterprise単体の数値ではない)コーディング44%短縮・週4.9時間削減
NEC2023年8月対象8万人・実利用2.5万人ChatGPT Enterprise資料作成50%減・議事録83%減・FAQ作成75%減
ダイキン工業2023年(報道ベース)全社展開(規模は公式未確認)ChatGPT Enterprise公式開示なし(報道のみ)
三菱UFJ銀行2025年11月全行員約35,000人(2026年1月以降展開)ChatGPT Enterprise展開計画の発表段階で数値公表なし

(2026年10月2日時点で確認できた公式発表・プレスリリースに基づく。ダイキン工業の情報は複数メディアの報道によるもので、本記事では公式一次ソースでの確認ができていません。楽天の数値はこのあとに書く通りChatGPT Enterprise単体の効果ではない点に注意してください)

楽天グループは2025年2月28日のプレスリリースで、毎日AIを使う社員が8,000人を超え、AI利用者全体では30,000人を超えたと発表しました。コーディング作業では44%の時間短縮、1人あたり週平均4.9時間の業務削減という数値も示されています。ただしこの数値は「Rakuten AI」という楽天独自のAI基盤(OpenAIのモデルと自社LLMを組み合わせたもの)の実績であり、ChatGPT Enterprise単体の効果として公式に切り分けて発表されたものではない点に注意してください。

NECは2023年8月30日の発表で、資料作成の時間が50%削減、議事録作成が平均30分から約5分(約83%短縮)に、FAQ作成の工数が75%削減されたとしています。これに加えて、脅威インテリジェンス業務では攻撃を検知するルールの実装に生成AIを使い、作業工数を約80%削減したと報告されています。コンタクトセンターでは日本マイクロソフトとの共同技術検証を進めており、オペレーターの応答時間を35%短縮できる見込みだとしています。対象は国内グループ社員約8万人、実際に利用しているのは約2.5万人、1日あたりの利用回数は平均約1万回と報告されています。資料作成・議事録・FAQ・脅威インテリジェンス・コンタクトセンターと、業務ごとに数値を示している点が、業務領域の列挙にとどまるAlbertsonsの発表との違いです。

製造業では、ダイキン工業もChatGPT Enterpriseの早期導入企業として複数のメディアで紹介されています。報道によれば、同社は2023年に社内向けの生成AI環境を整え、設計やIT部門を中心にプログラミングに関する質問が多く寄せられるなど、コーディング支援を中心とした活用が進んだとされています。工場の現場社員はPCに常時向き合う働き方ではないため社内への浸透が課題となり、現場リーダー層への教育を通じてノウハウを広げる工夫が報じられています。ただし、これらの経緯や数値は本記事が確認できたダイキン工業公式・OpenAI公式の情報では裏付けが取れておらず、報道をもとにした参考情報として捉えてください。

三菱UFJ銀行は2025年11月12日に、2026年1月以降、全行員約35,000人へChatGPT Enterpriseを順次展開すると発表しました。文書作成や調査、顧客対応、分析業務の効率化・高度化が目的で、OpenAIとの合同プロジェクトチームを設置し、「AIチャンピオン」と呼ぶ推進役を育てる教育プログラムを実施するとしています。数万人規模へ一度に展開すると部署ごとにAIの使い方に差が出やすいため、推進役を先に育てて社内に広げる体制を整えている形です。なお、ChatGPT Enterpriseは入力データをAIの学習に使わない設計やSOC 2準拠のセキュリティ認証(前述)を備えており、大企業が導入時に気にしやすい機密データの扱いには、契約プラン自体の仕組みとしてあらかじめ応える形になっています。同じ三菱UFJフィナンシャル・グループでは、三菱UFJ信託銀行が契約書レビューを支援する別のAIエージェント「LegalBrain Agent」を導入しており(関連記事)、グループ内でも業務領域ごとに異なる生成AIを使い分けている様子がうかがえます。

トヨタコネクテッドについては「クラウドサービスの利用状況を確認する棚卸し作業が2時間半から15分に短縮された(約90%削減)」という数値が複数のメディアで報じられていますが、本記事が確認できたトヨタコネクテッド公式の情報にはこの数値の記載が見当たりませんでした。数字そのものは公式な裏付けが取れていない参考情報として捉えてください。

これらと比べると、Albertsonsの発表は数値を示さず「どの業務で使っているか」に焦点を当てた内容です。国内企業が定量的な成果や社内への広げ方まで打ち出す一方、Albertsonsは買い物体験という顧客向けの新機能を前面に出している点が対照的です。

自分の仕事に使うなら、まず何をするか

Albertsonsほどの規模でなくても、着眼点そのものは応用できます。

応用できる3つの着眼点と最初の一歩
FAQ対応、下書き、API自動化の3つから、自分の仕事に近いものを選べます。

1つ目は、社内のFAQ対応です。問い合わせが多い定型的な質問をAIに任せる発想は、NECの事例にもある通り、規模を問わず効果が出やすい領域です。

2つ目は、定型業務の下書き作成です。資料作成やメールのドラフトを一度AIに任せ、人が仕上げる形にすると、ゼロから書くより着手が速くなります。

3つ目は、APIを使った定型処理の自動化です。見積もり文の整形や問い合わせの一次分類など、ルールが決まっている作業はAPI経由で組み込むと手が離れます。

今日できる最初の一歩は、手元のChatGPTプラン(Free〜Business)でカスタムGPTを1つ作ってみることです。社内のFAQやマニュアルを読み込ませるだけで、問い合わせ対応や文書作成の下書きを任せられるAIアシスタントが作れます。Marketplace でのコネクタ連携も参考に、ChatGPT を既存のツールと組み合わせる方法も確認しておくと、本番導入のイメージが具体的になります。

向いている人・向かない人

ChatGPT Enterpriseが向いているのは、数千人規模の社員が同じセキュリティ基準のもとでAIを使う必要がある大企業です。契約は個別見積もりで、公式サイトでも金額は公開されていません。

向いている人・向かない人と今日やることの整理
自分がEnterprise向きか、まずカスタムGPTで足りるかを一目で判断できます。

個人開発者や小規模チームには、ChatGPT Enterpriseをそのまま契約する選択肢は現実的ではありません。ただしAlbertsonsが実践しているのは、2,200店舗・週3,600万人規模の大企業だけに通じる発想ではありません。Oracle の ChatGPT Work事例を見ると、業務ごとの効果測定は大企業でも試行錯誤の過程にあることがわかります。社内データを読み込ませたAIに「なぜその提案なのか」まで答えさせるという考え方そのものは、手元のChatGPTプラン(Free〜Business)でカスタムGPTを1つ作るだけで、個人や数人のチームでも今日から小さく再現できます。

業務効率化の具体例はAstraの実装事例で確認できます。社内のFAQやマニュアルを読み込ませ、問い合わせ対応や文書作成の下書きを任せてみるところから始めるのが現実的です。

その上で、社員数が数百人を超え、SSOや監査ログ、個別の契約条件まで必要になった場合は、Enterprise規模の機能を確認する価値があります。ChatGPT Enterpriseは公式サイトでも金額を公開しておらず、営業への問い合わせが前提の契約です。個別見積もりが必要な規模かどうかは、公式ページの機能一覧と自社の人数・用途を照らし合わせるだけで数分で見当がつきます。

Albertsonsの核心は、社内データをAIに読み込ませ、理由まで添えて提案させている点です。同じ組み合わせは、手元のChatGPTでカスタムGPTを1つ作るだけで今日から試せます。

今日やるなら: 手元のChatGPTプランでカスタムGPTを1つ作ってみてください。それで物足りなくなり、SSOや監査ログ、個別の契約条件までEnterprise相当の管理・セキュリティ機能が必要になったら、下記からChatGPT Enterpriseの料金プランを確認してください。

ChatGPT Enterpriseは学習非使用・SOC2準拠で、料金は個別見積もり。

ChatGPT Enterprise の料金プランを確認する(公式)

出典: OpenAI公式発表(openai.com/index/albertsons-reimagining-retail、2026年10月1日公開) / ChatGPT Enterprise公式ページ(chatgpt.com/ja-JP/business/enterprise/) / 楽天グループ公式プレスリリース(2025年2月28日、PR TIMES配信) / NEC公式発表に基づく報道(ITmedia NEWS、2023年8月30日) / 三菱UFJ銀行公式発表(2025年11月12日)