英国の大手銀行Barclays(バークレイズ)は2026年10月1日、Anthropicとの協業を拡大し、AIモデルのClaudeを開発支援から社内の問い合わせ対応、顧客メールの処理まで、業務全体に広げると発表しました。

金融業は個人情報や規制対応が厳しく、AI活用にもっとも慎重な業界の一つです。その銀行で、Claudeはすでに1万6,000人以上の行員が日常的に使い、1日約12万通の顧客メール処理に関わるところまで広がっています。一部署の実験ではなく全社規模で使われているという事実は、「AIはまだ試験段階」と考えている業務効率化担当者や中小企業の経営層にとっても見過ごせない変化です。

今日からできる最初の一歩はシンプルです。Claude.aiの無料プランかProプランで、自分の業務データを使って同じような作業(文書の要約・社内資料の検索)を試してみることです。

ここで扱うのは、Anthropicが2026年10月1日に公開した公式発表と、公式のプラン情報です。Barclays社内のシステムを実際に操作した記録ではありません。

Barclaysは何にClaudeを使っているのか

公式発表を読み解くと、Claudeは次の4つの業務に使われています。発表で名指しされている範囲に絞って整理します。

BarclaysがClaudeを使う4つの業務を並べた図
Barclaysの活用は、開発・刷新・顧客対応・メール処理の4業務に広がっている

ソフトウェア開発(Claude Code)

これまで、コードを1行ずつ書き、レビューし、テストする作業は人手が中心でした。Barclaysは、AIがファイルの編集やコマンドの実行までこなす「AIコーディングエージェント」のClaude Codeを使い、2026年末までに開発者人口の50%、2027年にはソフトウェアエンジニアの過半数が利用する計画を掲げています。これは目標値であり、現時点の実績ではありません。

レガシーシステムの近代化

銀行の基幹システムは、数十年分のコードが積み重なっていることが珍しくありません。Craig Bright氏(Barclaysの共同最高執行責任者〈COO〉)は、ソフトウェア工学とサイバーセキュリティがAIによって作り変えられつつあると述べ、Claudeを「構築・テスト・セキュリティ・運用に組み込まれていく、エージェント的な能力」と位置づけています。古いシステムを理解し、安全に手を入れる作業にClaudeを充てる狙いです。

社内ナレッジ検索・顧客対応支援(Colleague Knowledge Assistant)

Barclays UKでは2025年から、RAG(検索拡張生成)方式のアシスタントが稼働しており、2,000万人超のリテール顧客への対応を支援しています。これまで行員が複数の資料やシステムを横断して調べていた情報を、Claudeベースのアシスタントに聞けばすぐに見つかる形にしたものです。利用者は16,000人以上、累計検索数は100万件超に達しています。

市場部門(Global Markets)のメール処理

市場部門では、顧客からの問い合わせメールをClaudeモデルが分類し、必要な情報を補ったうえで担当者へ振り分けています。自動返信ではなく、人が対応する前の下ごしらえです。処理件数は1日あたり約12万通です。

ただし、Barclaysの開発者全体の人数やエンジニアの総数は公式発表に記載がなく、「50%」「過半数」が何人分に相当するのかは分かりません。導入コスト(契約形態・ライセンス費用)も公表されていません。

一部署の試験導入から全社規模のインフラへ

多くの企業にとって、AI導入はまだ一部署の試験運用にとどまっています。Barclaysの発表が示すのは、そこから一歩進んで、開発者の過半数が日常的に使う前提の「インフラ」へ移行しているという点です。Oracleの ChatGPT Work 導入事例も同様に、全社規模への展開を示しています。

Barclaysの利用者数と処理件数をまとめた結論図
利用者数・処理件数・導入計画の3つの数字が、試験運用を超えた規模を示している

Anthropicのチーフ・コマーシャル・オフィサーであるPaul Smith氏はこう述べています。

“Claude now helps 16,000 Barclays’ colleagues find answers for customers, sorts 120,000 emails a day, and will be in the hands of most Barclays engineers by 2027. Very few institutions hold AI to such a high standard.” (Claudeは今、16,000人のBarclaysの同僚が顧客への回答を見つける手助けをし、1日12万通のメールを仕分けし、2027年までにほとんどのBarclaysのエンジニアの手に渡ります。これほど高い基準でAIを扱う組織はごくわずかです。)

Barclays側も、AIの価値を単純な人員削減とは位置づけていません。共同COOのAnne Marie Darling氏は「技術の真価は、顧客・取引先・同僚にもたらす影響と、それが可能にする成果で測られる」と説明し、ルーティン作業をAIに移すことで、行員がより複雑な判断や顧客対応に時間を使えるようにする狙いだと述べています。

同時にBarclaysは、ガバナンス・セキュリティ管理・人による監督をAI活用の中心テーマとして明記しており、導入の速さと管理体制の両方を発表の柱にしています。

個人や中小企業が今日から試せること

Barclaysが使っているのは企業向けの契約ですが、同じClaudeという土台は個人向けプランでも触れます。Barclaysの3系統と、個人・中小企業が今日から試せる範囲の対応関係を整理しました。

FreeプランとProプランで使える機能の対応表
Freeで試せるのは文書の要約まで。開発・Excel・ブラウザ操作はPro以上が必要
Barclaysでの用途試せる範囲必要なプラン
ソフトウェア開発(Claude Code)自分のコードやツール開発を手伝わせるPro以上(Freeは非対応)
社内ナレッジ検索(Knowledge Assistant相当)チャット+ファイルアップロードで資料を要約・検索Free(500MB/ファイル・20ファイル/チャット、Projectsは最大5個)
Global Marketsのメール処理相当表計算での集計・分析を任せるClaude for Excel・Pro以上+Microsoft 365サブスク
ブラウザ上の定型作業サイトを横断した定型操作の自動化Claude in Chrome・Pro以上

(料金・対応プランは2026年10月2日時点の公式ページに基づきます)

表のとおり、Claude Code・Claude for Excel・Claude in Chromeはいずれも同じProプランに含まれています(Claude for Excelのみ、別途Microsoft 365のサブスクリプションが必要です)。Pro以上であれば、ツールごとの追加課金はありません。もっとも手軽なのは、Freeプランのままチャット画面に社内文書をアップロードし、要約させてみることです。クレジットカードの登録も不要です。Claude Codeでの開発支援、Claude for Excelでの表計算の自動化、Claude in Chromeでのブラウザ操作まで一通り試すなら、Proプラン(月20ドル、年払いなら月17ドル)が必要になります。実際にProとMaxの料金差を試算した記事も参考になります。Freeプランではこの3つはいずれも使えません。

なお、Freeプランの1日・1時間あたりの利用回数の上限は、公式ヘルプページに具体的な数値の記載がなく「有料プランほど上限が高い」とだけ説明されています。社内文書の要約を日常的に何度も使いたい場合は、上限を気にせず使えるProプラン以上が候補になります。

向いている会社・向かない会社

Barclaysのように、定型的な問い合わせ・大量の文書・繰り返しの多い業務(顧客対応メールの仕分け、社内規程の検索、コードレビューの下準備など)を抱える会社は、AI導入の効果が出やすい領域です。実際、日本の金融機関でも同様の動きが進んでおり、大和証券はLayerXのAi Workforceを相続業務に導入、三菱UFJ信託銀行はLegalBrain Agentを採用しています。個人や中小企業でも、まずは「繰り返しの多い定型作業」が自分の業務のどこにあるかを洗い出すところから始めると、同じ考え方を活かせます。

AI導入に向く業務と向かない業務の比較
定型化できる業務ほど効果が出やすく、個別判断が中心の業務は効果を実感しにくい

一方、個別対応が中心で定型化しにくい業務(都度交渉が必要な折衝、前例のない判断が必要な意思決定など)は、AIに任せる部分が少なく、導入効果を実感しにくい領域です。Barclays自身も、AIの役割をルーティン作業の肩代わりに置き、複雑な判断は人に残すという前提で展開しています。

もっと詳しく

Claude公式料金ページのFree・Pro・Maxのプランカード
Proプランの月額と、Claude Codeが含まれる点を公式料金ページで確認できる

Claude.ai個人向けプランの比較

プラン月額Claude CodeClaude in ChromeClaude for Excel等M365カード登録
Free$0✕✕✕不要
Pro$20(年払いなら$17)○○○(M365サブスク別途必要)必要
Max$100〜○(Proの5x/20x usage)○○必要

Claude in Chromeは2025年8月にパイロット版として発表され、同年11月にMaxプラン、12月にPro・Team・Enterpriseプランへと段階的に広がった機能です。サイトごとに権限を許可・取り消しできる設計になっています。

Claude for Excelは、Excel on the webや対応バージョンのWindows・Mac版で動くアドインです。セルを引用した回答、数式の関係を保ったままの値の変更、ピボットテーブルの編集などに対応します。Microsoft 365のサブスクリプションが別途必要です。

なお、Barclaysが導入しているClaude Code・Knowledge Assistant・Global Marketsのメール処理それぞれの契約形態やライセンス費用は公式発表に記載がありません。企業向けの契約は、ここで紹介した個人向けプランとは別の条件で結ばれています。

まとめ

Barclaysは2026年10月1日、Claudeの活用をソフトウェア開発・レガシー刷新・社内ナレッジ検索・Global Marketsのメール処理という4つの業務に広げ、2026年末までに開発者の50%、2027年には過半数がClaude Codeを使う計画を発表しました。規制の厳しい金融機関が、一部署の実験ではなく全社規模でAIを使い始めたこと自体が、今回のニュースの核心です。

FreeからProへ進む今日の一歩をまとめた図
試すならFreeで文書の要約から始め、3機能をまとめて使うならProを検討する

同じ土台にあるClaudeは、個人や中小企業もFreeプラン(無料・カード登録不要)から触れます。Claude Code・Claude for Excel・Claude in Chromeまで含めて試すなら、月20ドルのProプランが必要です。Claude Codeの料金をProとMaxで実際に試算した記事もあわせて参考にしてください。

今日の一歩としては、まずFreeプランのチャット画面に社内文書を1つアップロードし、要約させてみることです。そこで物足りなさを感じたら、Claude Code・Claude for Excel・Claude in Chromeがまとめて使えるProプラン(月20ドル、年払いなら月17ドル)を検討する番です。

BarclaysがClaude Code・Excel連携・ブラウザ操作に使う機能は、月額$20のProプランから個人でも使える

Claude.ai Pro の料金プランを確認する(公式)