将棋AIの研究開発で知られるHEROZ株式会社が、スマートフォンで録音するだけでAIが議事録を作ってくれるアプリ「HEROZ ASK」の提供を始めた。会議や商談のたびに議事録作成に時間を取られている人に関係するニュースだが、誰でも今すぐ無料で使えるアプリではない点に注意が要る。確認したのはHEROZ社の公式発表・公式サイト・App Store公式ページの記載(2026年9月28日時点)で、アプリ自体の操作は行っていない。

迷ったらこれ|法人契約の有無で判断が変わる

すでに勤務先がHEROZ ASK(法人向け生成AI SaaS)を契約している人は、App Storeからアプリをダウンロードし、発行済みのアカウントでログインするだけで使い始められる。

HEROZ ASK契約済みか未契約かで最初の一歩が分かれることを示す比較図
契約状況によって最初にやることが分かれる。未契約なら個人でも今日から試せるtl;dvが現実的な選択肢

一方、契約のない個人や、これから議事録AIを探している中小企業の場合、このアプリ単体では使い始められない。公式の案内のどこにも無料トライアルの記載が見当たらないためだ。**個人で今日からスマホ議事録を試すなら、tl;dvが現実的な選択肢になる。**クレジットカード登録が不要で、モバイルアプリでの録画にも回数の上限がない(公式サイトで確認・2026年9月28日時点)。

何が起きたのか|HEROZ ASKとは

HEROZ株式会社が、会議や商談をスマートフォンで録音するだけでAIが文字起こしと整理を行い、議事録としてまとめるアプリ「HEROZ ASK」の提供を開始した。提供開始日は2026年9月11日。このニュース自体の配信は同年9月28日で、日付が2つ出てくるため混同しやすいが、アプリが実際に使えるようになったのは9月11日である。

HEROZ ASK公式発表のアプリ概要欄で提供開始日2026年9月11日を丸で囲んだスクリーンショット
公式発表の『アプリ概要』欄によると提供開始日は2026年9月11日(PR TIMESの配信日9月28日とは別の日付)

アプリの基本的な流れは次の3つだけだ。

  1. スマホで録音する(専用機器やパソコンは不要)
  2. AIが会話を解析し、話者ごとの発言を整理しながら議事録を自動作成する
  3. 要点・決定事項をスマホからいつでも確認する(移動中・外出先でも)

用途別(商談記録・社内会議・定例ミーティング・インタビュー)のテンプレートも用意されている。公式が想定する使い方は「お客様との商談」「社内会議・定例ミーティング」「取材・インタビュー」「対面での打ち合わせ」の4つで、なかでも「パソコンを開きにくい場所でも、スマートフォンひとつで記録を開始できる」点を訪問先・移動中の打ち合わせ向けとして打ち出している。

HEROZの位置づけ

HEROZ株式会社は将棋AIの研究開発を出発点とするAI企業で、将棋アプリ「将棋ウォーズ」なども手がける東証スタンダード上場企業だ。今回のHEROZ ASKは、2024年2月のアーリーアクセス版提供に始まり、2025年に業務特化のAIエージェント構築機能や利用状況の可視化ダッシュボードを追加してきた法人向けAIサービスの延長線上にある。今回のスマホアプリは、その一連の機能拡張に続く新しいクライアントという位置づけになる。

HEROZ ASKが将棋AI開発からスマホアプリ提供に至るまでの歩みを示す年表
将棋AI企業として始まったHEROZが、法人向けAIサービスを段階的に拡張してきた延長線上に今回のアプリがある

できること・できないこと(対応OSに注意)

まず押さえておきたいのは対応端末だ。HEROZ ASKはiOS(iPhone・iPad)専用で、Android版は用意されていない。App Storeの互換性欄には「iOS 26.0以降が必要です」と明記されている。Androidを使っている人は、今回のアプリの対象外になる。

App Store公式ページの互換性欄でiOS 26.0以降が必要と丸で囲んだスクリーンショット
App Store公式ページの『互換性』欄は『iOS 26.0以降が必要です』とだけ表示され、Android版は掲載されていない

公式が案内する機能は次のとおり。

  • スマホですぐ録音できる(専用機器・パソコン不要)
  • AIが会話を解析し、議事録を自動作成する
  • 話者ごとの発言を整理する(誰がいつ話したかをAIが振り分ける)
  • 要点・決定事項を効率よく確認できる
  • 商談記録・社内会議・定例ミーティング・インタビューなど用途別のテンプレートに対応する
  • 作成した議事録はスマホからいつでもどこでも確認できる

App Store上のプライバシー表示は「データの収集なし」となっており、アプリ側からのデータ収集は行われないと明記されている。

文字起こしや話者分離の精度を示す公表値は、公式ページ・プレスリリースのいずれにも見当たらない。数字で比較したい人は後述の既存ツール比較記事も参考にしてほしい。

利用条件|個人が無料で使えるわけではない

ここが今回のアプリでいちばん誤解しやすいポイントだ。App Store上のアプリ自体の価格表示は「無料」だが、これはダウンロードにお金がかからないという意味でしかない。公式発表には次のように明記されている。

PR TIMES公式発表の【ご利用について】欄を枠で囲んだスクリーンショット
公式発表は『本アプリのご利用には、法人向け生成AIプラットフォーム「HEROZ ASK」のご契約が必要です』と明記している

本アプリのご利用には、法人向け生成AIプラットフォーム「HEROZ ASK」のご契約が必要です。ご契約中のお客様は、発行済みのアカウントでログインしてご利用いただけます。

つまり、個人が新規に無料アカウントを作って単体で使い始める設計にはなっていない。母体となる法人向けHEROZ ASKの料金プランは、シェアプラン(全機能オールインワン)が月額10万円〜、大規模導入向けのカスタマイズプランは別途見積りとなっている。公式サイトには「一人900円〜ご利用可能です。スモールスタートをご希望の方はお問い合わせください」という注記もあるが、これはあくまで組織単位の契約が前提の金額で、個人が単独で契約できる価格ではない。無料プランや無料トライアルについての記載は、確認した範囲では見つからなかった。

既存の文字起こし・議事録AIツールとの違い

会議の録音から議事録を作るツールは、HEROZ ASK以外にもいくつかある。代表的な3つと公式情報だけで並べると、次のようになる。数値はいずれも各社の公式サイトで確認した内容で、weevee独自の実測値ではない(確認日: 2026年9月28日)。

HEROZ ASKとNotta・Rimo・tl;dvの個人契約可否と対応OS・無料枠を比べた対応表
個人単位の契約という選択肢を持たないのはHEROZ ASKだけ。他3社は無料枠から個人で試せる
項目HEROZ ASKNottaRimotl;dv
録音方法スマホのみ(アプリ内)スマホ/PC/Web/Zoom等会議連携スマホ/PC/Web/Zoom・Meet・Teams・Webex連携オンライン会議へのボット参加型録画+モバイルアプリ
対応OSiOS(iOS 26.0以降)。AndroidなしiOS/Android/Windows/Mac/Web/Chrome拡張iOS/Android/WebWeb(PC)/モバイル(iOS・Android)
無料枠明記なし(法人契約が前提)月120分・1回3分まで無料トライアルあり(初期時間数は非公開)¥0(AIメモ会議10回分・クエリ10回分、録画3時間/回、モバイル録画は無制限)
料金アプリDLは無料。利用には法人契約(シェアプラン月額10万円〜)が必要Pro 月額$13.61〜プロ 月額¥4,950〜プロ 月額¥3,080〜

一番の違いは、HEROZ ASKだけが「個人単位の契約」という選択肢を持たない点だ。Notta・Rimo・tl;dvはいずれも個人でアカウントを作って無料枠から試せるのに対し、HEROZ ASKは組織としての契約が前提になる。

文字起こしの精度を実際に使って比べた内容は、既存のAI文字起こし実測比較記事にまとめている。Notta無料版の制限を実測した記事では、120分という上限の実際の使い勝手も確認できる。

向いている人・向かない人

HEROZ ASKに向いている人と向かない人を左右で対比した図
HEROZ ASK契約済みの企業担当者には向くが、未契約の個人やAndroid利用者には向かない
  • 向いている: すでにHEROZ ASKを法人契約している企業の担当者。訪問先や移動中など、パソコンを開きにくい場面で記録を残したい人
  • 向いている: 社内の他業務(資料作成・データ検索など)もHEROZ ASKに集約したい、複数AIモデルを1契約で使い分けたい企業
  • 向かない: 個人事業主やHEROZ ASK未契約の一般ユーザー。今回のアプリ単体では利用を始められない
  • 向かない: Androidを使っている人。対応はiOSのみ
  • 向かない: パソコンの画面上でリアルタイム字幕を見ながら会議を進めたい人。HEROZ ASKはスマホ録音が前提で、PC・Web版の案内はない

今日できる最初の一歩

勤務先がすでにHEROZ ASKを契約しているなら、まず社内の管理者に契約状況とアカウント発行の有無を確認し、App Storeで「HEROZ ASK」を検索してダウンロードするところから始められる。

契約がない、あるいは個人で試したい場合は、tl;dvの無料プランに登録し、次の会議や商談を1本録音してみるところから始められる。無料プランはクレジットカード登録が不要なため(公式サイトで確認・2026年9月28日時点)、この種のSaaS新規登録としては数分程度で済むことが多い。ただし登録から録音開始までの分数そのものは公式サイトにも記載がなく、tl;dv自体の登録操作は本記事では行っていないため、正確な数字としては示さない。つまずきやすいのは録音方法の選び方だ。tl;dvはオンライン会議へ録画用のボットを招待して使うのが基本で、モバイルアプリでの録画にも対応する構成のため、はじめて使う際は「会議にボットを招待するのか」「アプリ単体で録音するのか」のどちらで始めるかを最初に決める必要がある。会議のたびに議事録作成に時間を取られているなら、まずここで試すのが早い。

無料プランは¥0・カード登録不要。

tl;dv を無料で始める(公式)

もっと詳しく|HEROZ ASKの背景

母体となる法人向けHEROZ ASK本体は、ChatGPT・Claude・Geminiを1つの契約で切り替えて使える設計で、会話ログはAIの学習に使われない。Box・Notion・Slack・Salesforce・freee・Google Drive・Gmail・Google Calendarといった業務ツールとの連携にも対応し、ISO27001を取得したAzure OpenAI Service基盤で運用されている。公式サイトでは、生成AIをそのまま使う場合や専用ツールを個別に契約する場合、システム会社にスクラッチ開発を依頼する場合と比べて、一元管理できる分だけ管理の手間とコストを抑えられる、という位置づけで紹介されている。

HEROZ ASK本体が持つAIモデル・連携ツール・基盤の特徴をまとめた図
今回のアプリの母体は、複数の生成AIを1契約で使い分けられる法人向けプラットフォームHEROZ ASK本体

アプリのアップデート履歴も確認できた。2026年9月18日にはバージョン1.1が公開され、「モデル選択のUIを改善」「録音中に強制終了した場合に再開できるように対応」という2点が更新されている。アプリのスクリーンショットには「GPT-5.4」と表示されたモデル切替とみられるUI要素が写っているが、これはスクリーンショット内の表示であり、使用しているAIモデルについての公式な明言ではない。